今年も雨ふりの季節がやってきた。

雨はもちろんあまり好きではない。予定していたことがだいたいできなくなるか、面倒くさくなるから。だけど「雨ふり」という言葉はなんだか好きだ。

雨ふりを想うとき、「RAIN DOGS CAFE」というカフェのことを思い出す。雨ふり犬のカフェ。
犬と一緒にお茶ができるカフェ。もちろんお店にも看板犬がいた。自転車で少し走ったところにある公園の前にあるカフェで、一度訪れたあと関西に引っ越し、戻ってきてから訪ねてみたら建物が取り壊されていてなくなっていた。

ネットで調べると、お店は通りから少し入ったところに移転していた。雨がふりそうでふらない週末に訪れてみることにした。住宅街の中にお店はあった。古い一軒家を改装したお店で、以前のお店よりさらに素敵になっていた。

サッシを開けると、小さな犬がキャンキャンと吠えてきた。私の小さい娘はあまりビックリもしなかったが、飼い主のお客さんが申し訳なさそうに外に出て、またすぐ戻ってきた。犬は吠えなかった。
「番犬なんで、外から入ってきた人に吠えちゃうんですよ。」同じ人でも、自分より先に中にいる人間には吠えないんだとか。娘が近づくと、「くうんくうん」とかわいい声を出した。

看板犬の「dazz君」はお昼寝中だった。娘は犬のリードをかけておく金具をガチャガチャひっぱったりせわしなかったが、久しぶりにゆったりとした喫茶時間を過ごす。お店には大瀧詠一がずっと流れていて、それがなんだか夏のはじまりの空気に似合っていた。

帰るとき、ふと店主が声をかけてきた。「前にも一度いらっしゃいましたよね?」
私はびっくりした。訪れたのはもう6年くらい前で、しかも一度しか来ていない。

店主は私の記事を読んでくれていたのだという。
たびたびブログを読んでいて、私が関西に引っ越したことも知っていた。近所の美味しいパン屋さんのこと、近くのクリーニング屋さんの看板犬(皮膚が弱くていつもエリザベスカラーをしていた)が最近亡くなったこと。私自身も忘れていた、昔ブログに書いていたことが次々と彼の口から出てくる。

インターネットの奇跡みたいなものはもうとっくに信じなくなったけれど、たまにはこういう素敵な小さなつながりをもたらしてくれる。

少し、雨ふりが好きになった。また来よう。

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2009年8月20日の「RAINDOGS CAFE」のこと。

RAINDOGS CAFE
さいたま市南区別所4-5-15
048-699-9462
12:00~19:00(L.O 18:30)
月休(休日の場合は連休明けの平日)