去年の夏くらいに、幼稚園の頃住んでいた田端に行ってきました。特に大した理由はなく、昔住んでいた町の「今」を知りたかったからです。田端駅から歩いて15分くらいのところに僕が住んでいたマンションがあるのですが、何しろ25年以上立ち寄っていなかった場所なので、駅を出た段階で、右に曲がればいいのか、左に曲がっていいのかさえ分からなくなってしまっていました。駅の様子もだいぶ変わっていましたしね。
それでもかすかな記憶を頼りに、40分以上かけてマンションの近くまでたどり着く事ができました。そしてマンションに近づくにつれ、霧がかっていた当時の記憶が晴れてきたのです。幼稚園のころ、近所の友達と一緒によく遊んでいた公園、ちょっと意地悪な感じのおばさんがやっていた駄菓子屋さん、子供達が集まってめんこ遊びをしていた小さいおもちゃ屋さん。
驚いたことに、それらはほぼ当時のまま残っていたのです。25年以上前と同じ光景がそこにはありました。その瞬間頭の中で、当時の記憶が、まるで映画の様に再生されていったのです。それは少しぼやけていたけど、とても懐かしくて素敵な、何度も見たいと思う映画でした。派手さは無いけど、心の中にいつまでも残るような単館上映の映画。
そしてマンションに着いた時、そこには、補助輪を付けて自転車の練習をする幼稚園の頃の僕がいました。一番最初にそのシーンが出てきたのは、たぶんそれが自分の記憶の中で一番印象に残っていたからでしょう。もうちょっと映画の続きを観ていたかったのですが、他の用事で帰らなければいけなかったため、残念ながら、続きは次回にすることにしました。あれから数ヶ月……そろそろ映画の続きが観たくなってきたので、今月くらいにもう一回観に行ってきます。“思い出”という名前の最高の映画を。
