中央線の武蔵小金井からバスに揺られて、5分弱。
駅の真北に位置する小金井公園、その 広大な敷地内にあるのが「江戸東京たてもの園」だ。
時代の流れとともに失われゆく東京の歴史的建造物、うち特に文化的・建築学的に
価値の高いものを移築保存し、屋外展示を行う野外博物館である。
 
数10軒が建ち並ぶ園内、しかし中でも一際目を引くのが、東部区画最奥部の「子宝湯」だ。
かつて千住に存在したというそれは見事の一言、もう驚くより他にない。
家1軒の値がはるという透かし彫りの懸魚、大きく美麗な九谷焼き、
格式高い吹き抜けの格天井、広々とした日本庭園-
現存する東京銭湯より全てが一段も二段も上を行き、
贅を尽くした圧倒的な存在感で来園客を出迎える。
幾多の東京銭湯でもまさに移築保存にふさわしい、歴史的建造物が子宝湯なのだ。
 
初めて目にするその迫力に、あんぐり口を開けたままの子どもたち。
だがこの古銭湯に惚れこんだのは、彼らだけではない。
宮崎駿監督作品の映画「千と千尋の物語」の舞台となった、「油屋」。
和洋折衷摩訶不思議な湯屋は、日本各地・さまざまな時代の名建築を監督が頭の中で混ぜ合わせたもの。
そのモデルのひとつが、この子宝湯なのだから。
愛媛の道後温泉、群馬の四万温泉積善館、名だたる面子に肩を並べる歴史的建造物・子宝湯。
あの名画を忘れられない方は今度の週末、たてもの園を訪ねてみてはどうだろう。
 もしあなたが、あのユーモラスな神々に魅入られたなら-
静寂の浴室で目を閉じれば彼らの安堵の笑い声が、どこからか聞こえてくるかもしれない。
 
kodakarayu_10
kodakarayu_09
kodakarayu_08
kodakarayu_07
kodakarayu_06
kodakarayu_05
kodakarayu_04
kodakarayu_03
kodakarayu_02
kodakarayu_01
 

○ 子宝湯
住所 東京都小金井市桜町3-7-1
小金井公園 江戸東京たてもの園内