ガタン、ゴトンー
郊外に位置し、すぐそばののどかな京王線が不思議なノスタルジーを醸し出す、府中のさかえ湯。
古くから人口の多い下町によく見られる宮造り銭湯だが、人口の希薄だった多摩地区では非常に希少。
板張りの内装は都内でも有数の古態、熟練した職人技の結晶は学術的価値も高く、
いつかはどこぞの大学教授が調査に来たという。
丹沢水系の流れを汲むという天然水、その豊富なミネラル分は教授もお墨付き、
温泉を名乗ってもいいほどの名銭湯だ。
 
しかし、この古い古い有様ときたら。覚悟は、できていた。
初めて訪れた2009年春の時点で、もう長くはないことを主人が漏らしていたからだ。
廃業の知らせが入ったのは、それから2年もしない頃だった。
最終日には都内のみならず、廃業を惜しむ客が他県からも大勢押し寄せたという。
大勢の客の笑顔がさかえ湯への餞となったことが、主人へのせめてもの救いとなればよいのだが。

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○ さかえ湯
住所 東京都府中市八幡町2丁目30-3
※ 2011年1月22日をもって廃業