「その街のこども」という映画を観た。
阪神・淡路大震災から15年が経過した神戸の街で、ふとしたきっかけで出逢った男女、コウジ(森山未来)とミカ(佐藤江梨子)が、お互いに抱えていた「あの時の記憶」を打ち明ける、という映画だった。 2010年1月に三宮の東遊園地で行われた「追悼のつどい」に向かって、ふたりは夜の神戸の街を歩く。ふたりはいろんな会話をする。辛い記憶も打ち明ける。 そのなかであった、この会話が印象に残った。
「辛いことは、思い出さないようにするんじゃなくて、少しでも辛くなくなるように、
工夫すればいいんじゃないのかな。」
「誰が?」
「みんなが、みんなで。」
映画は、ほとんどふたりが夜の神戸を歩くシーンが続く。高架下や、住宅街。歩く描写が、とても印象に残った。私も街を歩くのが好きだ。歩きながら見える人々の営みに耳を澄ますと、なんだかとても落ち着く。 映画を観ながら、その何処かへ向かうコウジとミカについつい歩調を合わせてしまう。猫を見つけると路地に入ってしまったり、ちょくちょくコンビニに入ったりする「歩きグセ」はミカと一緒だ。
そして、私も神戸に来た。御影、岡本、芦屋と、ミカとコウジを追いかけるように旅をした。背の低い高架。高台の静かな住宅街。
そして西宮に着いた。西宮は夏の似合う街だった。「夏」を「街」にしたような「街」だった。「カントリーロード」の歌がどこからか聞こえてきそうだ。
住宅街にカフェを見つける。オールドアメリカの雰囲気がしていて、趣味の小物がたくさん置いてある。オールドジャズが流れる。
「Busy Bee Cafe」―忙しいハチ、という店名には似合わず、無愛想なお兄さんが淡々とお店を切り盛りしている。
アイスコーヒーを注文する。暗い店内に、夏の強い太陽の光が容赦なく入ってくる。
お金を払い、帰ろうとすると、無愛想なお兄さんが顔を上げて、ドアを開けて見送ってくれた。
彼は笑顔を見せた。夏休みの少年のようなキラキラした表情だった。
今は、私の居場所から、遠く遠く離れた街。
私はどれだけの時間、歩いてきたのだろう。
私はこれからどれだけの時間、歩いていくのだろう。




Busy Bee Cafe
兵庫県西宮市南昭和町9-12
0798-68-1933
12:00~深夜
木17:00~深夜
不定休
阪神・淡路大震災から15年が経過した神戸の街で、ふとしたきっかけで出逢った男女、コウジ(森山未来)とミカ(佐藤江梨子)が、お互いに抱えていた「あの時の記憶」を打ち明ける、という映画だった。 2010年1月に三宮の東遊園地で行われた「追悼のつどい」に向かって、ふたりは夜の神戸の街を歩く。ふたりはいろんな会話をする。辛い記憶も打ち明ける。 そのなかであった、この会話が印象に残った。
「辛いことは、思い出さないようにするんじゃなくて、少しでも辛くなくなるように、
工夫すればいいんじゃないのかな。」
「誰が?」
「みんなが、みんなで。」
映画は、ほとんどふたりが夜の神戸を歩くシーンが続く。高架下や、住宅街。歩く描写が、とても印象に残った。私も街を歩くのが好きだ。歩きながら見える人々の営みに耳を澄ますと、なんだかとても落ち着く。 映画を観ながら、その何処かへ向かうコウジとミカについつい歩調を合わせてしまう。猫を見つけると路地に入ってしまったり、ちょくちょくコンビニに入ったりする「歩きグセ」はミカと一緒だ。
そして、私も神戸に来た。御影、岡本、芦屋と、ミカとコウジを追いかけるように旅をした。背の低い高架。高台の静かな住宅街。
そして西宮に着いた。西宮は夏の似合う街だった。「夏」を「街」にしたような「街」だった。「カントリーロード」の歌がどこからか聞こえてきそうだ。
住宅街にカフェを見つける。オールドアメリカの雰囲気がしていて、趣味の小物がたくさん置いてある。オールドジャズが流れる。
「Busy Bee Cafe」―忙しいハチ、という店名には似合わず、無愛想なお兄さんが淡々とお店を切り盛りしている。
アイスコーヒーを注文する。暗い店内に、夏の強い太陽の光が容赦なく入ってくる。
お金を払い、帰ろうとすると、無愛想なお兄さんが顔を上げて、ドアを開けて見送ってくれた。
彼は笑顔を見せた。夏休みの少年のようなキラキラした表情だった。
今は、私の居場所から、遠く遠く離れた街。
私はどれだけの時間、歩いてきたのだろう。
私はこれからどれだけの時間、歩いていくのだろう。




Busy Bee Cafe
兵庫県西宮市南昭和町9-12
0798-68-1933
12:00~深夜
木17:00~深夜
不定休