南北線・赤羽岩淵駅と志茂駅、そのちょうど中間辺りに位置した銭湯が栄湯。
開けた土地に高層マンションが建ち並び、都内にありながら埼玉の香りが濃くなる、赤羽のすぐ近くだ。
しかし駅の東側も、このあたりまで来ると都心へのベッドタウン的な雰囲気は薄れ、
狭隘な路地に小ぶりな民家がひしめき合う、昔ながらの住宅街。
夏場ともなればどこからかノスタルジックな蚊遣りの香りが流れてきたりして、
全くの外来者にもかかわらず、どこか懐かしい雰囲気を覚えたのがこの一帯だ。
伝統の東京銭湯とは異なり、昭和後期の民家となんら変わらない質素な趣の栄湯。
内部も古いといえば古いがどこか洋風の色が濃く、盛んに寺社型の銭湯が建てられた
昭和20~30年代前半とは異なり、少し時代が下った昭和40年前後の創業であろうことが読み取れる。
しかし奥にはしっかりと、富士のペンキ絵。
この勇壮で豪快な背景画を女将もたいそう誇りにしていたようで、
絵にまつわる昔話を私は幾度も聞かされたものだ。
栄湯が廃業してから、すでに1年以上経つ。
しばらくは建物も残されていたのだが、2011年初めには、取り壊されたとの店主からの知らせが入った。
○ 栄湯
住所 東京都北区志茂5-29-3
※ 2010年7月11日をもって廃業