大田区といえば、あまりに有名な黒湯。
ぬるっとした特徴的な真っ黒の鉱泉、それは堆積した古代の植物を礎とし、
気の遠くなるような年月を経て形成された天然の恵みだ。
豊富に湧出する黒湯、大田区南部- 蒲田を中心とした一帯では複合型の大型入浴施設のみならず、
昔ながらの小ぶりな町銭湯までもが天然鉱泉。
風呂好きにはちょっとした聖地のような場所でもあり、惚れ込んだ者の中には
わざわざ住居を移し、風呂なしアパートから通う猛者までいると聞く。
私が朝日湯を初めて訪れたのは、たしか2008年の冬至。
ちょうど、柚子湯を実施していたときだった。
日も暮れ既に時間も遅くなっていたためか、ほとんどの柚子は原型を留めず、
見通すことの出来ない黒湯の底に、不思議な触感だけが残っていたのを覚えている。
客は、それなりに入っていた。しかし、だいぶ進行し心配していた老朽化。
朝日湯廃業の知らせを聞いたのは、それから2年が経とうかというころであった。






○ 朝日湯
住所 大田区千鳥1-16-6
※ 2010年9月28日をもって廃業