奈良時代からの絹織物の名産地、桐生。
国内最高品質級の織物は"桐生折り"と呼ばれ、京の西陣と並ぶ伝統工芸品だ。
その歴史を裏付けるような、史跡の数々。
21世紀も10年を過ぎた今日にあっても、石蔵や煉瓦造りの
ノスタルジックな建造物が、そこかしこに残されている。
 
町の規模にしては、比較的件数の多いのが桐生銭湯。
そのほとんどは小ぶりの民家ほどしかないような、低く質素な一軒家だ。
市域北部に位置する一の湯、創業はおよそ1世紀前。
初代は当時、すぐ隣で紡績工場を営んでいた。
 
時代は、国を挙げての富国強兵。桐生も富岡と並び、繊維産業の基幹を担った。
染物職人や女工、何十人も抱えた従業員たち。当然、インフラの整備は不可欠。
彼らを一度に入浴させるべく、建てたのが一の湯というわけだ。
仕事の合間にほっと一息、それはそれはかしましい往時の様子が、
静寂のこの浴室にもよみがえってくるようだ。
 
時代は下り、紡績工場は役目を終え、とうの昔に姿を消した。
だが一の湯だけは今なお残り湯を沸かし、桐生の歴史を伝え続けている。
 
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○ 一の湯
住所 群馬県桐生市本町1丁目4−35