能登半島の旅の道中のことである。
金沢をレンタカーにて出発したのは早朝、しかし能登を半周し終えたころには
すでに日もとっぷりと暮れていた。
狐狸に化かされそうな山道を飛ばし、辿り着いたのはこの日の最終目的地・輪島。
古来より漁港として栄え、戦国時代には温井氏の城下町としての顔も持つ。
そして何よりも有名な輪島塗、本土辺境の地にありながら今なお多くの観光客を抱える、
北陸の港町である。
 
1千年の歴史を超える有名な朝市通り、だが到着したのは夜9時過ぎ。
観光客もまばらになった通りを抜け、一軒の湯屋の暖簾を潜る。
輪島にも数少なくなった銭湯、白山湯。
外観には改装の跡が見られるものの、歴史はおそらく戦前に遡る。
骨子は創業時のまま、しかしかの能登地震の影響は大きく、
頑強なはずの造りもしばらく経ってからあちこちが痛み始めたと聞く。
 
それでも補修を行い、能登の湯の火を守り続ける女将。
全て客が帰ったにもかかわらず、一見の旅人を心ゆくまでもてなしてくれた。
暖かな心遣いに深く礼をし、私は内に畳まれた白山湯の暖簾を潜った。
 
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○ 白山湯
住所 輪島市河井町4-114