大学時代の友人と会うため静岡市内をバスで移動中、
なにげなく町並みを眺めていたところ目に入ったモルタル造りの建築。
ぼんやり意識にわずか1秒ほどであったが、それでも私には認識するに十分だった。
静岡駅北で降り立ち、すぐさま先ほどの建物を目にした場所へ向かう。
駅より少し東側、東海道線の高架を南へ越えたところに、松乃湯はあった。
くすんだ外観の2階建て、古いとはいえまだまだ現役としてやっていけそうなものだが、
擦り硝子越しに窺えるのは、雑然とした中の様子のみ。
残念ながら、廃業して久しいようだ。
この通りは駅前でのアルバイト帰りに何度も通ったはずだが、銭湯のことなど考えもしなかった学生時代。
当時ならまだ店を開けていた可能性も高いが、意識に上ったことすらただの一度もない。
在学中のあの頃に松乃湯を知っていたら-
2度と開くことのない戸を前に、過去を悔やむ私はただただ立ち尽くすばかりだった。
○ 松乃湯
住所 静岡県静岡市駿河区八幡1-3-11
※ 廃業。時期は不明