勇壮な破風を備えた、さながら寺社仏閣を思わせる宮造り-
数々の情報媒体への露出の結果、現在全国的に流布している銭湯像であろう。
だが意外にもその存在は関東圏、および近郊県に限られる。
その中でも分布は特に東京寄り、神奈川でも現存するものは川崎市、横浜市あたりまで。
横浜も外れのほうでは簡素なトタン葺きが散見されるようになり、
鎌倉・湘南地区と西へ進むにつれ、一般の民家と差のない地方の小銭湯の趣が濃くなってくる。
 
神奈川も小田原まで来ると、様相はもう完全に地方銭湯そのものだ。
質素なトタン屋根、小ぶりの民家ほどの小さな建屋。
脱衣所は数人が入ったらいっぱい、都心のワンルームマンションにも程遠い。
それでも浴室の奥には立派な富士の絵、かろうじてここが東京圏であることを実感する瞬間だ。
主に湘南地区の背景画を描いていた、鎌倉の新世堂の作品。
東京銭湯の絵師とは異なる、不思議な淡い質感には懐かしさすら覚えよう。
しかし、すでに絵師も引退。
多くは塗り替えられ銭湯自体も急減、この絵が見られるのももはや時間の問題だ。
 
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○ 田浦湯
住所 神奈川県小田原市扇町1丁目15-9