佐原といえば、"小江戸 "。
栃木市、川越市と並び江戸の情緒を今に伝える、関東有数の水郷都市だ。
小野川の舟運を背景に栄えた、物資の集散地。
川の両岸には風情ある柳の並木、江戸時代から残る純和風建築。
現在では懐かしい日本の原風景を求め、多くの散策者で賑わう観光都市としての側面も持つ。

その一角に残された古銭湯、金平浴場。
高い高い天井は存在せず、地方銭湯らしく普通の平屋と変わらない浴室。
東京の広い浴室なら重みに耐えられずトタン葺きとなるところだが、金平浴場では全てが瓦葺。
東京ではまず見ない風景、規模を抑えた小銭湯ならではの建築様式だ。
 
それにしても目立つのは、表の立派な千鳥破風。
寺社仏閣を真似たそれは、関東圏- 特に東京近辺に固有の様式とされ、他の地域では極めて稀な存在だ。
隣県とはいえ、鈍行列車では東京駅から2時間以上。
遠く離れた佐原の地でこの姿を目にしようとは、思いもよらなかった。
佐原が最も栄えたのが、江戸時代末期から昭和初期。
だが後に鉄道が開通し、水運の利も自動車交通に取って代わられ、商都の勢いは衰退した。
創業はおよそ1世紀前と伝えられる、金平浴場。
その勇壮な破風は、稀有な水郷都市の栄華をいまに伝えるものといえよう。


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○ 金平浴場
住所 千葉県香取市佐原イ6221