越前大野の古風な城下町を歩いていると、ふとのっぽな煙突の姿が目に入る。
銭湯の軒数も少ない地方都市においてこれはまた想定外の展開、思わず歩みも早まる。
たどり着いたのはいかにも北陸銭湯らしい、木造の2階建て。
一見2階建てに見えても、高い吹き抜け天井により1階のみの東京銭湯とは異なり、
北陸銭湯は住居として使用するため、多くが2階を備えているのが特徴だ。

相当な古銭湯と見えるが、清掃が行き届いているためか、日が暮れれば戸を開けて
今にもおかみさんが出てきそうな佇まい。
 
だが、ぴしゃりと閉じられたままの戸。
定休日なら内側に暖簾が畳まれているはずだが、その気配もない。
辛うじて確認できた擦り硝子越しの店内、土間には植木の鉢が所狭しと並べられ、
これでは客が出入りできるはずもない。
事情は、すぐに悟った。
数枚を記録として写真に収め、私はそっと越前の廃銭湯を後にした。

 
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○ 名もなき廃銭湯
住所 福井県大野市