簾の垂れ下がる木造の一軒家、いかにも京風情の錦湯。
いかに京都とはいえ21世紀も10年を過ぎたというのに、この風格には恐れ入る。
しかし驚くのはまだ早い。戸を開けると、棚に所狭しと並べられた脱衣籠-
これこそが京都の伝統工芸品、柳行李(やなぎごうり)。
端から端までびっしりと並ぶ様はまさに圧巻、他の地方ではまず目にすることのない光景だ。
 
京都の銭湯では、入浴客の脱衣籠として伝統的に柳行李が用いられてきた。
職人の手作業によって丁寧に編み上げられ、ひとつ8万円以上という高価な工芸品。
当然、安易に取り換えることなどできるはずもない。
常連客は名前を入れ、壊れたら職人が編み直し、洗い直し、数10年に渡って使用される。
中には50年、親子3代に及ぶものもあるという。
昨今では安価なプラスチック製籠に置き換わるところも多い中、
この光景には驚くよりほかにないだろう。
 
昭和2年の創業、当時の風情を今なお残す老舗。
しかし柔軟な感性を持つ、店主の長谷川泰雄氏。
若者へも裾野を広げるべくライブやDJイベントなども実施、全国から入浴客が訪れる有名店だ。
数々のアーティストと懇意にしているという長谷川氏、中でもお気に入りはピアノジャック。
インディーズながら反響は大きく、受付の際は全国から問い合わせが殺到し、
番台の電話は1日中鳴り止まなかったという。
京の伝統に、新世代の感性。錦湯の未来は、明るい。

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○ 錦湯
京都府京都市中京区堺町通錦小路下ル八百屋町535