色あせた暖簾を潜ると、まったく人気のない脱衣所-
薄暗く静まり返った中に雑然と並べられた家財道具、隅には古風なオーディオ機器が居並ぶ。
低く狭くえらく年季の入った木造の天井、いったいいつ頃のものだろう。
番台には店主の姿はなく、代わりに小さな人形が置かれているのみだ。
2,3度店主を呼ぶも、返事はない。まあ、地方の銭湯ではままある光景だ。
ふと浴室の方に目をやると、曇った硝子戸の向こうに肌色の塊が見えた。
お代は後にして、脱衣所へと上る。
服を脱ぎ浴室へ向かったところで、ようやく店主の女将が出てきた。
江戸時代、日本でも屈指の銅山として栄えた足尾。
大間々は銅山のお膝元、足尾と江戸とを結ぶ街道の宿場町として発展した。
銅山も幕末には採掘量が激減し閉山寸前へ追い込まれるが、明治に入り再び鉱脈が発見され、
炭鉱技術の進歩を背景に、栄華の絶頂を迎えた。
創業100年近くという千代の湯、おそらくその頃に建てられたものだろう。
すぐ前の通りが”銅(あかがね)街道”と呼ばれたように、当時の町の賑わいぶりが目に浮かぶ。
だがあまりにも有名な鉱毒事件、足尾は昭和中期に閉山。
それに伴い大間々の活気も失われ、今では煉瓦煙突の醤油工場や古銭湯が往時の名残を残すのみだ。
千代の湯もこの古態、老朽化は至る所へ及んでいるに違いない。
わずかに残った町の遺構だが、現存するのもそう長くはないのかもしれない。
○ 千代の湯
群馬県みどり市大間々町大間々1014
薄暗く静まり返った中に雑然と並べられた家財道具、隅には古風なオーディオ機器が居並ぶ。
低く狭くえらく年季の入った木造の天井、いったいいつ頃のものだろう。
番台には店主の姿はなく、代わりに小さな人形が置かれているのみだ。
2,3度店主を呼ぶも、返事はない。まあ、地方の銭湯ではままある光景だ。
ふと浴室の方に目をやると、曇った硝子戸の向こうに肌色の塊が見えた。
お代は後にして、脱衣所へと上る。
服を脱ぎ浴室へ向かったところで、ようやく店主の女将が出てきた。
江戸時代、日本でも屈指の銅山として栄えた足尾。
大間々は銅山のお膝元、足尾と江戸とを結ぶ街道の宿場町として発展した。
銅山も幕末には採掘量が激減し閉山寸前へ追い込まれるが、明治に入り再び鉱脈が発見され、
炭鉱技術の進歩を背景に、栄華の絶頂を迎えた。
創業100年近くという千代の湯、おそらくその頃に建てられたものだろう。
すぐ前の通りが”銅(あかがね)街道”と呼ばれたように、当時の町の賑わいぶりが目に浮かぶ。
だがあまりにも有名な鉱毒事件、足尾は昭和中期に閉山。
それに伴い大間々の活気も失われ、今では煉瓦煙突の醤油工場や古銭湯が往時の名残を残すのみだ。
千代の湯もこの古態、老朽化は至る所へ及んでいるに違いない。
わずかに残った町の遺構だが、現存するのもそう長くはないのかもしれない。
○ 千代の湯
群馬県みどり市大間々町大間々1014