2011年、とある冬の日の夕方である。
ここ20年来という厳しい冷え込み、高一以来12年ぶりとなる大阪は、駅を降りるなり大粒の雪。
新木川温泉にたどり着く頃には、上着の前面は真っ白になっていた。
雪を払い見上げれば、真っ青の外観に、細かなタイルの洋風建築。
純和風が多い東京とは異なり、阪神圏では古い銭湯でも
洋風もしくは和洋折衷の不思議な様式に出会う機会が多くなる。
だがこの衝撃的な配色の変わり者、大阪中を探してもそうお目にかかれるものではないだろう。

浴室に踏み入り、はっとした。そうだ、ここは大阪なのだ。
大阪銭湯の何よりの特徴は、浴槽。
浴槽を構成するのは、重厚かつ肌触りの良い御影石(花崗岩)だ。
全体に贅沢に使用された上等な石材、囲まれ湯に浸かればさながら温泉気分。
関東圏ではまず目にすることのない素材だが、近場の六甲山地では古来より花崗岩が多産。
そのため、大阪の銭湯にはこの形式が多いと考えられる。

そして、2段式にこしらえた浴槽の外側。地元民は関東のように洗い場前に陣取るのではなく、
浴槽外側の下段に腰掛け、背後の湯船から直接桶でお湯を掬い、体を洗う。
ああ、これぞ浪速の銭湯。見よう見まねで、温まり始めた体を石段に下ろす。
しかしなにぶん、慣れない姿勢。
ぎこちない動きの東京者は、地元客からは滑稽に映っていたに違いない。
 
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○ 新木川温泉
住所 大阪市淀川区木川東2-9-21