四ツ谷の「ロン」という喫茶店を訪れてみることにした。

店は駅の真ん前にあった。グレーの直線的な模様の壁がモダンな雰囲気の建物。
鉛の大きなドアノブに手をかけ中に入ると、空間は狭いが、吹き抜けが開放的な空間があらわれた。 お客はいなかった。カウンターの中にマスターと、アルバイトの女性がいた。

駅前の大きな交差点の角にあるのに、往来の音が全く聞こえない。聞こえてくるのは小さくかかるBGMと換気扇の音だけだ。 BGMはオーケストラの音楽だった。昔母がエレクトーンで弾いていたことのある曲だったが、タイトルは思い出せない。
天井が高く、静かなので、なんだか深海の底にいるみたいな気分になってきた。マスターとアルバイトの女性の気配がない。眠っている深海魚のようだ。お店の人は音を立てずにひっそりしていることが、このお店のポリシーなのかもしれない。そのおかげで、私の、心地良いひとりの時間が流れていく。

ほのかに、古いにおいがする。昔からあるホテルとかによくある、古い空気独特のにおい。なんだか無性に懐かしくなる、このにおいが私は好きだ。   

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ロン
新宿区四谷1-2
03-3341-1091