代官山駅近くの交差点で、「地下に喫茶店がある」と思って下っていったら、さらに奥に喫
茶店を見つけた。

地下1階、喫茶店。地下2階も、喫茶店。そして控えめに猿楽珈琲と看板が出された、
地下2階のほうが気になり、ドアを開けてみた。

そこはタイムスリップした空間だった。コチコチと複数の柱時計の音が鳴り響く。昔のレコ
ードやセピア色の写真が飾られ、静かにジャズが流れている。赤い照明が、サーカスの
テント裏みたいな、あやし気な雰囲気を醸し出している。
ひとつひとつのテーブルは古い建具で仕切られていて、一度お手洗いに立ったら、小さな
店内なのに迷って戻れなくなった。

マスターは頑固親父なのだろう。テーブルとか、ところどころに「急いでる人は時間のある
ときに」とか、注意書きがある。でも、小さく書かれた筆の感じが優しかったり、「子どもは、
大人になってからのお楽しみです(みたいな内容のこと)」とか、文法的にちょっとあやし
かったりして、憎めない。

夜の8時になった。柱時計がボーンボーンと、ひとつひとつ順番に店内に鳴り始めた。
「今」は何時なのか。今はいつなのか?
自分の中に埋没したいとき、訪れてみたい場所だ。

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猿楽珈琲
渋谷区猿楽町23-3-B1
03-3496-8900
13:00頃~23:00頃
不定休