色は匂へど 散りぬるを  (艶やかな花もいつかは枯れる)
我が世誰ぞ 常ならん   (永遠に変わらぬものなどこの世にありはしない)
有為の奥山 今日越えて (苦しみ多く道なき山を越えていくのだ)
浅き夢見じ 酔ひもせず  (浅はかな夢などは見まい、何かに酔いしれることもすまい)※意訳です             
          
          
日本語を美しいなぁと思うことはよくあるけれど、そう思わせる代表がこれ↑
五十音をすべて使って作られたこの歌は、
仏教の無常観を表しているのだそうで。
でも、もし深い意味なんて込められていなくても、
リズムの美しさだけで十分だなと思う。


最後の一文。
酔ひもせずは、「ゑひもせす」。
杉浦日向子さんの漫画に、この『ゑひもせす』がある。


十の短篇が収められたこの作品には、「ゑひもせす」という題名のものはない。
うっすらと悲しい話、市井の人の過去の記憶、胸に秘めた淡い恋、、、
江戸の人たちのそんな小さなお話が詰まった作品で、とっても杉浦さんらしくて、
普通の人のなんでもない毎日がとても愛しく思える。
この短編集に「ゑひもせす」とつけたのはなぜだろう?
舞台のように酔いしれることなどない日常のことだからだろうか?
登場人物たちが描いた夢は儚く消えたからだろうか?
杉浦さんに聞いてみたかった。


次回は、この『ゑひもせす』に収められた「吉良供養」を取り上げます。


 



ゑひもせす (ちくま文庫)



杉浦 日向子
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