夏目漱石と言えば、『吾輩は猫である』。
漱石がモデルとされる英語教師苦沙弥(くしゃみ)先生宅で飼われている猫が、
先生や先生宅にやってくる人々を観察して、人間という代物を風刺する。
「吾輩は猫である」なんて言う猫だから、「人間なんてものは」という
視座が貫かれていて、ふふっと笑わせられることも多いけれど、
正直、この作品あんまり好みじゃない。インテリの遊びに付き合えない気もして。
と、自分が「面白いな~」と読めない本でも、「面白く」読む方法は
いくらでもあるのです。
『吾輩は猫である』の最初、「タカジヤスターゼ」という名前の薬が出てきます。
これは、胃もたれや胸焼けに効く薬で、胃弱の苦沙弥先生が服用しています。
20年近く前、「私の運命」というドラマがあったのをご記憶の方はいるでしょうか?
坂井真紀扮する主人公の夫(東幹久)は、ある日癌の宣告を受けます。
今、誰かが癌だと聞いても、きっと治ると思えるけれど、その頃の癌は違ってた。
フリーアナウンサーの逸見さんが「病名は、癌です」と記者会見したとき、
それは「私は死にます」と言ったのと同義語で、絶望的な気持ちをみんなが
共有したようだった。
さて、「私の運命」。
夫婦は、治験薬に希望を託すのですが、その名前が「キジマリン」。
プロデューサーだかディレクターだかの名前が貴島さんだということを
エンドロールで見て知っていたので、なんだか拍子抜けしたっけ。
でも、このネーミング、意外と間違っていなくもない。
だってタカジヤスターゼは、高峰さんという人が麹菌から抽出した
成分から作った薬なのだそうで。
酵素ジアスターゼに高峰さんの「タカ」をくっつけたのだそうです。
それから、『伊豆の踊り子』にはこんなシーンが、
栄吉は途中で敷島四箱と柿とカオールという口中清涼剤とを買ってくれた。
「妹の名が薫ですから。」 と、かすかに笑いながら言った。
「ダジャレかよ」とつぶやきながら、本に登場する薬の名前に注目するのもご一興です。
※敷島は、当時売られていたタバコの名前
※根津には夏目漱石が『吾輩は猫である』を書いた旧居跡があるそうです。
最後まで読まずに通り過ぎた本が沢山あるのですが、
純文学を始め、そういった本達をもう一度手に取ってみたい
気持ちになりました。
胃潰瘍も致命的な病気であった時代。当時から
根津神社にはツツジが美しく咲いていたのでしょうか。。