暑い日々が続き、どこもかしこもクーラーの効いている快適空間の多い東京。
たまには汗ばみながら夏の夜風を味わうのもこの季節の醍醐味といえるでしょう。
ということで、今回は銀座の夜空を仰げる屋台居酒屋について。
JR有楽町駅 銀座口を出て晴海通りを渡り、線路沿いに歩いてゆくと
煙がムンムン、赤ちょうちんがゆらゆら揺らめく活気あふれる路地にぶつかる。
プラスチック製のビールケースを2箱重ねて、
その上に分厚いベニヤ板を乗せてあるだけのテーブルと背もたれのないパイプ椅子。
新しい席を作ろうと思えば、ものの30秒で出来上がってしまう。
ここの一角は道路にせり出して飲み食いできる居酒屋が軒を連ねている。
呼び込みの活気、アルコールを吸収した人々の活気、焼き肉の活気、
戦後すぐの日本の庶民と全く同じ風景なのではないか、と想像をふくらます。
所せましと席を並べているから、隣客の話も聞こえてくる程の近さ。
この近さが天井のない場所では有効で、ここへ来ると大抵、隣のおじさんと話が盛り上がる。
今回はオーストラリア人の友達と飲みに行って、
彼が持っている1973年製のローライフレックスにオジサンが反応。
(やはり、カメラ好きのオジサンはこういう場所が好きなんだ)
「僕はジャバラのクラシックカメラを使っているよ。」
「1973年かぁ~。あの頃はねぇ~・・・・(昔の話)」
「1973年じゃ私は産まれてないです」
「それ、何枚撮りのカメラ??僕のはね、1000枚撮りのデジタルカメラ」
(既に靴下になってパイプ椅子にあぐらをかいて発言するオジサン、オヤジギャグらしい)
など、しばらくカメラや写真の話で盛り上がる。
こういう気さくさ、気軽さが屋台の魅力でもある。
ここの屋台のシステムは、テーブルの上にある「ザル」にまとめていくらかお金を出しておく。
食べたいものを注文し、品物がテーブルの上に置かれた時にお店の人がその分のお代を集金してゆくというもの。
お店の人は、醤油屋のような藍染めのエプロンと、郵便屋さんのカバンのようなものを下げていて、
そのカバンのなかに小銭やらお札がジャラリと詰め込んである。
この活気ある雰囲気と、気さくさにひかれて、外国からの顔触れもちらほら。
二つ隣の席では、恰幅の良いひげもじゃのアメリカンが太い葉巻をくゆらせていて、
我々はその独特の香りのおこぼれを楽しむ。
適度な酔いと煙と雑音で、いつの間にか心が解き放たれる。
この時期の屋台は本当にお勧め。
(土地柄か、美しい女性も沢山飲みに来ていて、そこがまたいい。)
↓集金風景。ザルのお札が飛ばぬよう、小石が置いてある。
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まつ惣
東京都千代田区有楽町2丁目1-20
TEL: