「バケツをひっくり返したような」とはまさにこのこと。真夏みたいな暑さのあとは、やっぱり真夏みたいな夕立が待っていた。激しく地面に叩きつける雨粒の音と、雨の線が斜め45度になりそうなくらいの強い風。新橋駅からわずか数分のところにある会社までの道が、雨に濡れてどんどん濃く染まっていく。
残業用の夜食を買うためにTULLY'Sに立ち寄っている間にも、雨の勢いはすさまじくなるばかり。淹れたてのコーヒーが入った袋を片手に、しばし店の前で雨が弱まるのを待っていた。会社まで、あとちょっと。でも、そのあとちょっとがすんごく遠くに感じる。あまりの雨に、お店のスタッフも表に出ていた看板を片付け始めた。
「・・・さすがに店の前にずっといるのもジャマだよな。そろそろ行こっかな。」と覚悟を決めたその時。
「会社近いんすか。」
スタッフのお兄さんが声を掛けてきた。
「すぐそこなんですけど。なかなか雨弱まらなくて・・・。」
話してる間も、お兄さんは片付けの手を止めない。この雨だ。早く片付けちゃいたい気持ちはよく分かる。外のディスプレイを店の中へ入れ終わると、お兄さんはそのまま店内へ戻っていった。
その数十秒後。
「これ、良かったらどうぞ。」
さっきのお兄さんが傘を持って立っていた。お店の傘なのか、お兄さんの傘なのか分からないけれど、店の入り口で突っ立っている見ず知らずの私を気遣ってもらえたのがとっても嬉しかった。かばんを傘代わりにして足早に駅へ向かう人を目の端っこで捕らえながら、お言葉に甘えてその傘をお借りした。紺色の、シンプルで地味な傘だったけれど、優しさに溢れた傘だった。数分前までえらくブルーだった気持ちはすっかり消えて、ちょっとあったかいような、くすぐったい気持ちがした。
今度この傘を返しに行くときは、ちゃんと「ありがとう」と言ってこよう。で、いつもよりちょっと大きめのコーヒーを買おうかな。
残業用の夜食を買うためにTULLY'Sに立ち寄っている間にも、雨の勢いはすさまじくなるばかり。淹れたてのコーヒーが入った袋を片手に、しばし店の前で雨が弱まるのを待っていた。会社まで、あとちょっと。でも、そのあとちょっとがすんごく遠くに感じる。あまりの雨に、お店のスタッフも表に出ていた看板を片付け始めた。
「・・・さすがに店の前にずっといるのもジャマだよな。そろそろ行こっかな。」と覚悟を決めたその時。
「会社近いんすか。」
スタッフのお兄さんが声を掛けてきた。
「すぐそこなんですけど。なかなか雨弱まらなくて・・・。」
話してる間も、お兄さんは片付けの手を止めない。この雨だ。早く片付けちゃいたい気持ちはよく分かる。外のディスプレイを店の中へ入れ終わると、お兄さんはそのまま店内へ戻っていった。
その数十秒後。
「これ、良かったらどうぞ。」
さっきのお兄さんが傘を持って立っていた。お店の傘なのか、お兄さんの傘なのか分からないけれど、店の入り口で突っ立っている見ず知らずの私を気遣ってもらえたのがとっても嬉しかった。かばんを傘代わりにして足早に駅へ向かう人を目の端っこで捕らえながら、お言葉に甘えてその傘をお借りした。紺色の、シンプルで地味な傘だったけれど、優しさに溢れた傘だった。数分前までえらくブルーだった気持ちはすっかり消えて、ちょっとあったかいような、くすぐったい気持ちがした。
今度この傘を返しに行くときは、ちゃんと「ありがとう」と言ってこよう。で、いつもよりちょっと大きめのコーヒーを買おうかな。
またコーヒー買いに行こうって自然に思えますね。