桜も散り終わった4月某日の朝、寝ぼけ眼に衝撃的な知らせが飛び込んできました。
銭湯のペンキ絵師、早川利光氏が亡くなったというのです。
 
 
銭湯と聞いてまず思い出されるのは、雄大な富士山ではないでしょうか。
ペンキ絵師とは、それを専門に描く職人を指します。
2009年時点で全国でもわずか3名というとても貴重な存在、その1人が早川氏でした。
躍動感溢れる波しぶき、青々とした濃い富士山の構図がとても印象的。
かと思えば、古き良き風景とはミスマッチな動物たちを突然描き込んだりと、
独特の遊び心も併せ持った方でした。
多くの感動を届けてくださった故人へ、まずは心から追悼の意を表したいと思います。
 
今回の訃報に改めて、日本の銭湯文化が急速に失われているのだと実感しました。
物事って危ない危ないと言われていても、どこか他人事でしかないと思うんです。
事が起こってみて、自分の身に降りかかってみて初めて、
取り返しのつかなくなった現実に気がつくと思うんです。
 ご高齢とは知りながらも、いつまでもあの富士山を眺めていられるような気がしていた? 
そんなのんきな自分の姿に、改めて気付かされる出来事でした。
 
 
幸いペンキ絵は浴室の湿気にも耐えうるようにできているので、
今すぐに早川氏の作品が見られなくなるということはありません。
しかしいかに丈夫といっても時間の経過とともに劣化し剥げてきてしまうので、
数年経てば新たに描き換えられることでしょう。
それでなくても、廃業の相次ぐこの時代。
遠からず、早川氏のペンキ絵が失われることは確実になりました。
88か所の巡礼を目指して出発した、東京銭湯お遍路の旅。
しかしその大願成就も、もはや一刻を争う事態になってきたのかもしれません。
 
 
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