中央線の三鷹駅から北上すること20分近く、交通量の多い通りに面した武蔵野浴場。
飴色の扉を開けると迎えてくれたのは、番台前の金魚鉢だ。
中にはまだ数cmほどの幼魚たち、ここの庭池で生まれたものかと思えば
常連のお客さんがお宅で殖やし、持ち込んだものらしい。
どうりでみな大きさも揃っているわけだ。
もう毎年の恒例になっているようで、ここで皆に可愛がられながら大きく育つと
また引き取って行くのだとか。
創業以来ほとんど形を変えない木の香り、未だ残る華美な鯉のタイル絵。
確か、吉祥寺の鶴の湯(※)でも似たような図柄を見たことがある。
競い合うように豪華な銭湯が建築された昭和の高度成長期、
都心から離れても同じ武蔵野市だけに、似たような風潮が存在したのかもしれない。
駅から遠いにもかかわらず、暮れ方には20人近いお客さんで賑わう人気店。
店を出ると、この古めかしさからは想像もつかないお洒落女子が
すぐ後について表に出てくる。
そうか、すぐおとなりは吉祥寺だったか。
おかみさんに教わったバス停へ向かい、彼女と同じ帰り道を歩いていく。
○ 武蔵野浴場
住所 東京都武蔵野市緑町1?6?25
電話 0422-53-5655
営業 16:00~25:00
定休日 木曜
※ 第拾九番札所 ~ 鶴の湯 ~ 武蔵野市・吉祥寺