昨年大晦日に始まった東京銭湯お遍路の旅も、ちょうど廿番目の札所を回ったところ。
ここいらでちょっと一休みでもしたいところですが...
おや、ちょうど向こうにお茶屋さんが見えますね。
 
さ、お掛けなすって。
あらあら、横になったと思ったら、お休みになってしまいましたか。
仕方がありませんね、それではその間、銭湯にまつわるちょっとしたお話でもいたしましょうか。
第壱回は、「銭湯に行ってみよう」です。
  
 
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これまで、廿個所にわたる東京の銭湯を紹介してまいりました。
ちょっとでも興味を持たれ、町の銭湯へ行ってみようと思い立たれた方の為に、
今回はちょっとした手引きを書き連ねてみようと思います。
基本的には温泉やスーパー銭湯と同じと考えていただいてよいのですが、
町の銭湯ならではのポイントがあったりします。
 
 
○ 其の壱 ? シャンプーなどの備品を持っていきましょう。

 温泉や流行りの郊外型スーパー銭湯と違って、
 銭湯の浴室にシャンプー・リンス、石鹸はありません。
 タオルも原則的には、貸してくれません。
 
 私は初めて銭湯に赴いたとき何の疑問も持たず、
 目の前にあった、どこかのおじさんのセットを拝借してしまいました。
 悪気は無かったんです。備え付けだと思ったんです。
 
 ちょくちょく行くなら旅行用の小分けボトルに詰め替えて、
 一式をプラスチックの網かごに入れてゆくといいでしょう。
 浴室に持ち込むので、付着した水を切りやすいように。
 
 
○ 其の弐 ? でも、桶は要りません。
 
 桶は要りません。
 湯上りのカップルが木製の桶を抱えて仲睦まじく暖簾を潜るシーンは昭和ドラマの定番ですが、
 桶の無い銭湯は見たことがありません。
 都内の銭湯は、「ケロリン」の黄色いプラスチック製の桶がよく見られます。
 レトロで小粋な彼らはめっぽう丈夫で、なんと50年持つとも囁かれているほどです。
 
 だから、桶は要りません 。
 それでも映画のヒロインになりきりたい方は、どうぞマイ桶お持ちください。
 
 
○ 其の参 ? 体を流してから入りましょう。
 
 湯船に初めて浸かる前に、必ず体を流しましょう。
 最近では幼いころから公衆浴場で入浴する習慣が無くなったせいか、
 よくある温泉番組の影響か。
 たまに、そのまま浸かろうとする方も見られます。
 悪いことは悪いと注意する、長老のような存在がいなくなったとも耳にします。
 
 必ず、体を流してから入りましょう。
 銭湯の"基本のキ"です。
 
 
○ 其の四 ? サウナは別料金です。
 
 銭湯のサウナの多くは、入浴料の他に300円程度の別料金が必要です。
 これは、意外に感じられる方も多いのではないでしょうか。
 
 1度目は、なにも考えず入ってしまいました。
 2度目は、薄々気付き始めていました。
 そして客のおじさんに見つかり怒られました。
 サウナ入浴者の証である、腕輪をはめていなかった為です。
 
 私の無銭入浴を咎めたおじさんですが、 続けて
 「大丈夫、下に座ってれば外から見えないよ」と、 温かい言葉をかけてくれました。
 おじさんの気遣いに感謝しつつも己の無知を恥じ、 背を丸めてサウナを後にしました。 

 
○ 其の伍 ? 露天風呂はありません。
 
 多くの場合、銭湯に露天風呂はありません。
 間違って、従業員用のドアを開けないように。
 裏の釜場に出るだけです。
 
 
以上、銭湯暦2年を迎えたばかりの私ですが、簡単な銭湯のポイントを紹介しました。
地元の人々の生活に密着した町の銭湯は、とても趣深いものです。
 
入浴客のたわいもない世間話に耳を傾けてみるもよし。
風呂上りのコーヒー牛乳に至福の一時を求めるもよし。
あなただけの楽しみ方を見つけてください。
私は、曇りガラスのむこうに貼り付くヤモリなんかに風情を感じてしまいます。
 
いつもよりちょっとだけ早く会社をあがったら、
今宵は町のお風呂屋さんへ出かけてみてはどうですか。
赤らんだ肌で暖簾を潜り夜空を見上げれば、
柔らかな夜風と星空が、そっと夏の訪れを告げてくれることでしょう。
 
 
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おや、お目覚めになりましたか。
今日のお宿は、まだまだ遠くです。
さ、草鞋を履いて。
無事辿り着いたなら、今宵も素敵なお湯屋さんが待っているはずです。
 
 
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