12月、世田谷区のボロ市へ行った時のこと。
 

ボロ市というのは世田谷線・世田谷駅近く、
代官屋敷前の通りを中心に冬に立つ、とても活気ある市のことだ。
天正6年(1578年!)に当時の小田原城主・北条氏政が開いた楽市を紀元とし、
430年の歴史を持つという。

区指定の、無形民族文化財でもある。
当日は世田谷線・世田谷駅から上町駅付近にかけて、
植木や大工道具・食器や骨董品を扱う露店が数百並ぶ。
 
 
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世田谷線を降りると、駅前からすでに大混雑。
人の流れにそのまま乗って、代官屋敷方面へとそぞろ歩く。
古物商、屋台などがひしめき合って、閑静な世田谷の住宅街もこのときばかりは大賑わいに。
そんな通りの奥に見つけたのが、天狗湯だ。
  
 
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左側の男湯の戸を開け、番台さんに小銭を渡す。
中はシンプルな、洋風脱衣所だ。浴室前に冷水機を見つけ、思わず小躍りしてしまう。

浴室の天井は高く、直線で区切られている。富士の壁絵は無いが、
まばらに描かれたポプラのような木々が爽やかだ。
カランまわりはタイルは使わず、ほとんどステンレスで覆われている。
鏡と台と、鈍い光沢の銀色に囲まれて、小学校の給食調理室に放り込まれた感覚に。


奥には緑のタイルの浴槽が2つ、まずは左の"ぬるめ"で冷えた体を慣らす。
端のデジタル温度計は38.8度だが、アナログ計は44度。
実際は42度くらいだろうか。"あつめ"の側も、あまり体感温度は変わらなかった。
銭湯の温度計はズレていることも多いが、その適当加減にほっこりさせられる。


        *        *        *


"表はすごかったねえ"
"自転車置いて、裏から来たよ"

地元の常連さんたちが、会話を始めた。ボロ市は、今年もすごい賑わいだった。
名の由来である古着類も人気だが、一番の人だかりは骨董品関係だった。
お客さんとのやりとりに耳を傾けると、明治や大正といった言葉が
ポンポン飛び出してくるから驚かされる。

こちらの銭湯、改装はしているものの創業は昭和10年代。
そこらの骨董品にも負けず劣らず、この一帯では最も古い銭湯なんだそう。
 

今年のボロ市は、夜9時まで行われていたはずだ。
日が暮れると、銭湯にはさらに多くの人々が訪れる。
天狗湯の夜は、寒空の露店を畳んだ人たちで、いつにも増して賑わったのだろうな。
 
 
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賑やかな露店の様子
 
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今回の掘り出し物のかるた 
 
 
東京商工会議所世田谷支部HP・世田谷のボロ市

※次回は2008年1月15・16日開催
 
 
 
○ 天狗湯

住所 東京都世田谷区世田谷1?16?20
電話 03-3420-6900
営業 15:00~24:30
定休日 月曜