<12>赤坂~ミカドの肖像

トーキョーBOOK
2008/11/24 23:45 | コメント(0)
  • 小庭三

今は、江戸東京たてもの園にある高橋是清邸、二・二六事件当時は、 港区赤坂7丁目にあった。
青山1丁目駅から近いこの場所は今、高橋是清翁記念公園になっている。

ここは東京のど真ん中。あっちに行っても、こっちに行っても見どころがある。
ここらを舞台にしたり、ゆかりのある小説もいくつか思い浮かぶ。

だけど私、この辺りに行ったら必ず行きたい場所がある。ちょっと歩く。

ここから東へ、赤坂見附駅を目指す。
駅近く、みすじ通りの中ほどにある榮林という中華料理屋さんが目当ての場所だ。
目印はないので、住所を記しておく。


榮林 → 港区赤坂3-16-2

中華料理のスープ、酸辛湯(スーラータン)にはちょっとうるさい私が、 ナンバー1と思っているのがここ榮林だ。

「酢辛」の名の通り、酸味と絡みのバランスがよく、とろみの具合もいい。
干しシイタケや豚肉などの具も、もちろんおいしいが、酸辛湯の黄金比率は、酢とラー油と片栗粉に宿ると思っているので、具については詳しく言及しない。

あ~恋しい。
虎ノ門で仕事をしていた頃、少し高めのここの酸辛湯麺を食べるのがほんの時々の楽しみだった。
久しぶりに榮林の酸辛湯麺が恋しくなって、心は、雪の札幌から赤坂見附まで来てしまった。


 さて、ここらを舞台にした本は、

数年前まで、赤プリ(赤坂プリンスホテル)と呼ばれていたホテルが赤坂見附駅そばにある。現在は、グランドプリンスホテル赤坂という名に変わっているここは、丹下健三設計の超高層ホテルである。

2005年7月、このホテルの一室で、一人のおじいさんが亡くなった。都内には何百もホテルがある。人が死ぬこともあるだろう。だが、このおじいさんは、ただの泊まり客とは違っていた。おじいさんの名は、李玖(イ・グ)と言う。

おじいさんの父の名は李垠(イ・ウン)、朝鮮王朝最後の皇太子だった。母の名は、方子(まさこ)といい、梨本宮という宮家の姫だった人だ。

グランドプリンスホテル赤坂の別館は、この李王家の邸宅だった。戦後、新憲法の施行により身分を失い、維持することのできなくなった宮家の土地家屋の多くを西武が買ったため、西武系のホテルの敷地内には、瀟洒な洋館が建っていることが多い。グランドプリンスホテル赤坂の別館、元李王家邸宅も、イギリス中世のテューダーという建築様式で建てられた洋館だ。ずいぶん昔は、ここも客室として使われていたそうだが、今はレストランやバーになっている。

困窮した旧宮家の土地建物を西武が買ったことについて、是とも否とも言うつもりはない。ただ、新聞の死亡記事を見た時、おじいさんは、実家だった建物をどんな想いで見つめていたのだろうか、と思った。


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