『黄色い涙』―ノスタルジィ、阿佐ヶ谷。

トーキョー映画
2007/04/02 03:26 | コメント(3) | トラックバック(0)
  • 香ん乃

 この映画、500組・計1000名が抽選で招待の試写会(2007/04/01@東京国際フォーラム)に当選して観たんだけど、応募総数はなんと30万通だったらしい。どうしてそんなにものすごい競争率だったかというと、主演の嵐・5人全員が生で来場するティーチ・イン付き試写会(犬童一心監督と出演女優の香椎由宇さんもいらっしゃった)だったから。......あぁ、嵐のファンの皆様、ごめんなさい、本当に。私も、某若手俳優さんの追っかけをリアル・タイムでしている人間なので、「ファンでもないあんたが、なんでそういうレアな場に行けちゃってるんだよ!! ずるいよ! そういう機会は真のファンに譲るべきだろうよ!!」っていう状況の怒りと悔しさは、ものすごくすごくすごくすごぉぉぉぉくよくわかるんです、はい......。本当に申し訳ございません......。

 その申し訳なさへの責任のようなものもあって、せっかくの機会に観られたこの映画、じっくりしっかり堪能してきたつもり。犬童監督が嵐の5人を主演に撮った今作『黄色い涙』は、故・永島慎二先生の漫画がオリジナルで、1974年にはNHKでテレビ・ドラマ化もされたとのこと。犬童監督はそのドラマ版を夢中でご覧になっていたそうで、今回の映画化にあたって、ドラマ版のシナリオを書かれた市川森一さんを脚本に迎えた。かつてのドラマと時を経た映画の脚本が同じかただなんて、贅沢で素晴らしいことだよね。

 ときは1963年・杉並区は阿佐ヶ谷。オリンピックを翌年に控えた東京のこの地に、あふれる夢で胸をぱんぱんにした若者が集っていた。売れない漫画家の栄介(二宮和也)、歌手志望の章一(相葉雅紀)、画家を目指す圭(大野智)、小説を書いて身を立てたいと望む竜三(櫻井翔)、そして、米屋で働く勤労青年・祐二(松本潤)といった面々で......。

 近頃って、なんとなく「昭和」ブーム。日本の映画界でもそれは同じで、『ALWAYS/三丁目の夕日』や『地下鉄(メトロ)に乗って』、『フラガール』といった、昭和30・40年代を舞台にした映画が、ここ数年、かなり大当たりしている感じ。昭和50年生まれの私にとっては、昭和30・40年代って少しだけ昔の「知らない時代」だから、これらの作品を観ても「懐かしい」と実感するのはさすがに難しいのだけれど、「この時代が、一番『昭和昭和してる雰囲気』なんだろうなぁ」っていうノスタルジックな匂いは、なぜか感じ取れる。ばっちりと。

『黄色い涙』の時代設定も昭和。メインの舞台は阿佐ヶ谷。新宿もちらほら。この映画での「昭和の東京」は、おそらくロケよりもセットや特殊技術を駆使して実現しえたものなのだろうと思われるけれど、「当時の阿佐ヶ谷は、当時の新宿は、当時の『東京』は、きっと、こういう呼吸に満ちていたんだろうなぁ」という空気感が、優しい温かみにあふれて伝わってくる。生々しくはあっても、清潔感は確乎としてある辺り、犬童監督ならではのフィクション・マジック。リアリティを緻密に切なく体現すると同時に、目と感覚を愉しませる要素を決して排除しない「娯楽的美しさ」が、犬童監督の作品にはいつだってあるように、私には見える。誤解や錯覚だったら申し訳ないけれど、でも、私が犬童監督の映画を好きな理由のひとつがその「リアルさ」と「清潔な美しさ」の塩梅なのだ。

 犬童監督に傾倒してしまう理由が、私にはもうひとつある。この監督の、「若者の描きかたの瑞々しさと容赦のなさ」がそれ。特に、脚本家の渡辺あやさんと組まれた『ジョゼと虎と魚たち』と『メゾン・ド・ヒミコ』(いずれも私が大好きで大切な作品。奇跡みたいに心底で生き続けている)に顕著だったけれど、あだち充先生の名作野球漫画が原作で山室有紀子さんが脚本の『タッチ』でも、きらきらでメランコリックな若者描写を存分に味わわせていただけた。犬童監督の青春映画って、とことん王道に爽やかで甘酸っぱいのに、それ以上にもっと、心の中枢に痛い。その矛盾に、すっかりはまっちゃってる。今あげた3作に比べたら、『黄色い涙』の手ごたえはソフトでユーモラスすぎるのだけれど、犬童テイストの入門編としてなら、十二分に美味しい。

 二宮和也さん。「繊細な演技をするよ。いい役者だよ」と、『硫黄島からの手紙』を観た映画仲間たちから賞賛の声を聞いていた。『硫黄島からの手紙』を観る勇気がまだ出ない私(戦争映画が苦手な軟弱者なんで......。『父親たちの星条旗』は、試写で否応なく観た。んで、素晴らしかった。もともと、監督としてのクリント・イーストウッドの信者ではある......)は、二宮さんご出演の映画初体験が今作『黄色い涙』だったのだけれど、......視線使いにやられた。演じることそのものに長けてらっしゃる俳優さんなのはもちろん、特に、目線や眼差しでの表現が凄まじく饒舌。「ジャニーズ・アイドルでしょ? だったら、興味ないよ」という性急な認識でこの人の演技を観ずに通ったとしたら、それは大損。

 ラストは秀逸。現実味と夢物語のバランスが絶妙なんだもの。

『黄色い涙』
2007年・日本・128分
監督:犬童一心
出演:二宮和也 相葉雅紀 大野智 櫻井翔 松本潤 香椎由宇 他

※2007年4月14日(土)より〔恵比寿ガーデンシネマ〕他にて全国公開。

「黄色い涙」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

黄色い涙@映画生活


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コメント

『黄色い涙』早速ご覧になったんですね。試写会の倍率がすごいことになってましたが、それに当選なさるのはもっとすごいですね。
犬童監督の映画、残念ながら観たことがないのですが(いつも同じこと言ってすみません)、とても気になってはいるんです。入門編として、今作品が良さそうなんですね。もっと幅広い地域で上映していただけたら良かったんですが…。
昨今の「昭和」もの、嫌いではないんです。実際に体験した時間ではないはずなのに、なぜか懐かしく感じる不思議で微妙な感覚。また、この作品でも味わってみたいと思います。
また次回も楽しみにしております。

Posted by: MOT Date: 2007/04/03 23:58

初めまして。試写会でご覧になったのですね。素敵な映画評をありがとうございました。二宮和也の映画としては『硫黄島からの手紙』が4月20日にDVD発売されるので、ぜひ見ていただきたいです。そして、その前に、クリントも見て絶賛したという『青の炎』(蜷川幸雄監督作品)をぜひ。クリントはこの作品で二宮を「西郷」役に決めたそうです。おっしゃるように、二宮は目の表現が非常に優れています。「まなざしですべてを語れる」貴重な役者だと言えましょう。この作品に関しては、見ていないのでまだ語れませんが、嵐主演ということを前面に出して謳っているので、一般の観客への宣伝はなかなか難しいでしょうね。「硫黄島」であれだけの演技を披露し、世界的に注目されている二宮の役者としての今後が私も楽しみです。早く二宮主演の次回作が見たいです。

Posted by: もっちー Date: 2007/04/04 18:27

{MOTさんへ}

 こんばんは! いつもコメントありがとうございます。とても嬉しいです♪

 犬童さんの作品、私もすべて観たわけではないのですが、『ジョゼと虎と魚たち』と『メゾン・ド・ヒミコ』は、とてもとてもお気に入りです。ただ、とても胸をえぐってくる作品でもあります。この2作に比べると、『黄色い涙』は優しくて柔らかい質感の作品という感じがします。もちろん、どの作品からも犬童監督らしさははっきりと伝わってきますが、感触が全く異なる映画なので、多才で多彩な監督さんだなぁ、と感嘆してしまいます^^

 昭和の雰囲気には、落ち着きやゆるやかさの匂いがしてくるような感じがします。そして、人情も。慌しい現代だからこそ、昭和の薫りが求められるのかもしれませんね。

 いつもありがとうございます。どうぞまたおしゃべりにいらしてくださいね★

{もっちーさんへ}

 はじめまして! コメント、ありがとうございます。

>この作品に関しては、見ていないのでまだ語れませんが、
>嵐主演ということを前面に出して謳っているので、
>一般の観客への宣伝はなかなか難しいでしょうね。

 そうなんですよね。嵐のみなさんは素敵な演技で魅せてくださっていましたが、嵐が主演ということで「アイドル映画か」と先入観で避けてしまう方も多いのではないかと思うと、残念な思いが致します。

 二宮さんの出演作に関する詳しい情報を、どうもありがとうございました。もっちーさんのおっしゃる通り、「まなざしですべてを語れる」演技が『黄色い涙』でも素晴らしかったので、ほかの出演作も機会があったら楽しませていただきたいと思っています。

 この度はどうもありがとうございました。貴重な情報とご意見、感謝致します。

Posted by: 香ん乃 Date: 2007/04/05 01:22










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