伊勢崎線・曳舟駅を降り、東側の京成曳舟駅脇の踏切を渡ろうとすると、
黒煙を吐き出すのっぽな煙突が飛び込んでくる。
武家屋敷のような立派な外塀、惚れ惚れしてしまう豪華な宮造り。
手前の階段を上り戸を開けると、薄暗くしんとした空間が広がる。
昭和風情を色濃く残し、昔ながらの古銭湯が多い墨田区でも一際目立つ曳舟湯は、
戦前の創業当初のものと伝えられている。
よほど、その古態が気に入られたのだろう。ハリウッド映画"ワイルドスピードスター3"では
日本の銭湯を代表して登場、ロケ地目当てのファンも訪れる。
だがこのところの曳舟周辺の変わりぶりを見ていると、私は妙な胸騒ぎを覚える。
かの超高層タワーに代表されるように、急激に再開発の進む墨田区。
初めてこのあたりを訪れてから3,4年、しかしあちらにもこちらにも高層ビルが経ち、
駅前はまっさらに整地され、数ヶ月ぶりに降り立つとあまりの変わりようにあんぐりしてしまうほどである。
孤島のように取り残された一帯になりつつある、曳舟湯の周辺。
考えたくはないことだが、いつまでお湯を沸かし続けられるのか、
私はこの古銭湯の将来を案じずにいられない。
○ 曳舟湯
住所 東京都墨田区京島1丁目7-10