2010年11月、またひとつ谷中から昭和の灯が消えた。

初音湯といえば谷中の閑静な住宅街、初音小路にた佇むお風呂屋さん。
古風な瓦屋根に格天井、そして都内でも珍しい小判型の浴槽。
そしてそれを囲むように客が座るのだが、その光景たるやまさに芋の子洗い状態。
脱衣所から浴室にいたるまで裸の塊、いかに下町とはいえ、この光景には驚かされた。
よそ者の私は背中を丸め、こそこそと常連の間に入っていったのを覚えている。
初めて谷中を訪れたときの不思議な感覚とともに、初音湯は私の記憶に刻まれている。

しかし初音湯も、2010年秋に廃業。
あれだけの客の入りだったのに、私には理由は分からない。
しかし見えない設備の老朽化、経営者の高齢化、取り巻く環境はどう考えても逆境ばかり。
まだまだ風呂なし住宅の多い谷中も、これで残るは一軒のみ。
谷中から風呂屋の火が消えるのも、もはや秒読み段階だ。
 
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○ 初音湯
住所 台東区谷中3-10-3
※ 2010年11月21日をもって廃業