壮観な東京駅丸の内口の赤煉瓦の駅舎に向かい合って立つ、東京中央郵便局。すでにゴシック体のサインには覆いが掛かっている。

だいぶ寒くなってきました。
この季節、街行く人の重ね着を楽しんでいるような風景を眺めるのが好きです。朝コートが手放せなくなると、いよいよ僕の誕生日も近いからでしょうか。
春夏より秋冬派なんです。

さて、丸の内は、東京駅前の立派なビジネス街の風情ですが、かつては東京湾の入り江で、江戸時代に埋め立てらたのだとか。今では、とても想像がつきません。

丸の内は官有地であった明治時代、三菱に払い下げられ、今でも三菱地所をはじめとして多数の三菱系企業が軒を並べていて、昨今、新丸ビルなど再開発の激しい、皇居と東京駅に挟まれた場所です。

中央停車場として1914年(大正3年)に設置された東京駅は、当時商業街として栄えていた八重洲側ではなく、丸の内側、つまり皇居向きに設置され、行幸にでる天皇を迎える重要な機能を果たしてきました。皇居と東京駅をまっすぐに結ぶ道は行幸通りと呼ばれています。


様式的、伝統的な赤煉瓦の東京駅に合い対峙するように、装飾を排して非常にシンプルなその外観は、今ではとても有りふれている。この、ごく当たり前に見える意匠が近代化の歩みにおいて東京駅の駅舎から僅かな期間で成し得た重要な転換だと思う。


1933年(昭和8年)に建てられた東京中央郵便局は75年目を迎えた今年、その役割を終えて、今はもう、もぬけの殻。再開発を待っている。外観を残しつつも、高層ビルへと建て替えられる計画だ。

【お知らせ】この中央郵便局が建てられた同じ年に建てられた庭園美術館(旧朝香宮邸)で、現在"1930年代・東京"展が開催中です。旧朝香宮邸のアールデコの意匠を撮影した写真が図録に載っているので、是非建築散歩がてらご覧頂けると幸いです。