今日はバレンタインデー、気温は20度越え。恋の女神は一体何をしてくれたのだ。

3月の下旬くらいだろうか、春の気配を感じる時期になるといつも過去を思い出す。日中のやわらかい日差し、夜の冷たい風。季節が繰り返され、過ぎた日々を思い、自分が大人になっていくことを実感するのは、誕生日ではなく春だ。 そんな感覚が予期せぬタイミングで訪れ、ちょっと混乱する。幻の春だ。

なんだか異様にハイになり、とりあえず家を飛び出した。用事の前に、懐かしい場所、一昨年まで働いていた人形町へ。甘酒横丁をはじめ、通りは観光客で賑わっていた。あらためて見眺めると、老舗の名店が本当によく残っていて、上品ながら身近な感じがする、良い町だと感じる。

カーディガン一枚で汗ばむくらいだったので、冷たいものが食べたくなり、「初音」に入る。初音は、創業天保8年という超老舗の甘味処。甘味のおいしさももちろんだが、さすが老舗、を感じさせる、こじんまりとした上品な内装も素敵なお店だ。初音は当時の職場からすぐのところにあって、社長(女性)と「ガールズ・トーク」するときに訪れた。私ともうひとりの女性スタッフは、たまに「初音に行かない?」と誘われたものだった。

今日は名物の白玉あんみつとコーヒーを注文する。白玉あんみつ、絶品だった。まず、それぞれの素材ひとつひとつに主張がある。たとえばみつまめは香ばしくてさっぱりしているし、餡はしっかり甘く、上品な桃色の餅はちょうどいいやわらかさがある。それでいてそれぞれの素材はあんみつ全体の中の役割を見事に果たしていて、絶妙のバランス。
コーヒーは、深い香りだがさっぱり味のブレンド。なるほど、甘味に合う感じだったのでブラックで飲む。

というわけで、幻の春に誘われた人形町で、バレンタインとは全然関係ない時間を過ごしたのだった。 

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初音
中央区日本橋人形町1-15-6
03-3666-3082
11:00~21:00
日祝~18:00
無休