私は、「いるか」という名前の猫を飼っている。

もし(もしもよ)将来カフェなんて開くことができたなら、「いるかカフェ」という名前にしようと思っていた。村上春樹氏も、自分のジャズ喫茶の店名に飼い猫の名前をつけていたのだ。

だから、吉祥寺に「イルカッフェ」という名前のカフェがあることを知ったときは、少しショックを受けた。しかも、イルカの「カ」とカフェの「カ」をかけて「イルカッフェ」。発音したときの感じもいい。ヤラレタ、と思った。

敵陣視察ではないが(何をライバル視している?)、イルカッフェを訪れてみることにした。
特徴的なのは、席のつくり方だ。入ってすぐの席は、木のテーブルと椅子でナチュラルな感じ。窓際は書斎にあるような渋い机が置かれ、重厚で落ち着いた雰囲気。フロアはソファがゆったりと置かれており、奥には畳敷きの和の空間がある。

私は窓際の、書斎机席に座った。机には大理石みたいな天板がのっていた。カフェラテを注文する。表面にふわふわの泡がたっぷりとのった、好きな感じのカフェラテだった。泡をスプーンですくって飲みながら、ぼんやり外を眺める。ぴんと張りつめた空気の、冬の夜の町と空が少しだけ見える。

机の隅に目をやると、古い本が一冊立てかけてあるのを見つけた。ジュール・ヴェルヌという人の「二年間の休暇」という本だった。「二年間の休暇」。響きが良い。「二年間」。

二年間って、長くも短くも感じる年月のような気がする。 

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イルカッフェ
武蔵野市吉祥寺本町2-8-2-3F
12:00~23:00
無休

うちの「いるか」。 iruca04.jpg