蒸し暑い夜だった。

10月の終わり。夏はとうに過ぎたはずなのに、今夜は本物の夏みたい。時間が逆戻りしてしまったのかと思うくらい。

御茶ノ水の「画廊喫茶ミロ」を訪れることにする。御茶ノ水駅前の、学生で賑わう大通りから少し脇道に入った、別世界のような、それこそ時間がぐぅんと逆戻りしたようなところの奥にお店はあった。
窓際の席に座る。店内にはピアノの音楽が静かに流れる。雨音と、通りを歩く人の足音が聞こえる。小さな路地だが、けっこう行き交う人は多いようで、ぱたぱたと足音が止め処なく聞こえる。だけどその足音たちは、お店の前で少しも止まらずに過ぎてゆく。
こんな素敵なお店、偶然通りがかったら、私だったらきっと歩みを止めるだろうな。道行く人々は、この場所の存在を知っているのだろうか。ここは、ちゃんと現実にある場所なのだろうか。

窓は開け放たれていたが、それでも蒸し暑くて、カーディガンを脱ぐ。足音が聞こえる。遠くには、雑踏の音。ママがお皿を洗っている。
雨が上がったようだ。コーヒーが運ばれてくる。雨のにおいと、コーヒーの香りが混ざる。目を閉じる。私も混ざりたいと思う。時間も空間も不思議な感じのこの場所に。

明日は、秋になっているのかな。

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画廊喫茶ミロ
千代田区神田駿河台2-4-6
03-3291-3088
8:00~23:00
日祝休