上野の気になるしぶーい喫茶店。

最後に残ったのがこの「珈琲王城」だ。「ギャラン」「マドンナー」「喫茶いしはら」「純
喫茶丘」・・・上野・御徒町間、アメ横通り近くの路地に点在する喫茶店たちの「トリ」
である。

煌々と光る紫色の看板。ゴージャスな店名。しかし思いのほか小さなお店だった。
花柄の椅子と装飾の施された飴色の壁が、店名通りお城のようなイメージを醸しだし
ているが、店内にかかっているのはクラシックではなく、なぜかスタンダードなジャズ
だった。

ウエイトレスが注文を取りにくる。白いシャツに黒いミニスカートにストッキングという、
普通のウエイトレスの格好なのに、なんだかちょっとドキリとする。
そんな私の動揺をよそに、彼女は入ってきた客のテーブルに、何も聞かずにレジにあ
る煙草を持っていく。常連だろうか、会話はほとんど交わさない。

厨房に引っ込んだ彼女は、アルバイト仲間と話をする。会話も少し聞こえてきた。今日
こんなことがあったとか、他愛ないごく普通の話だ。ちょっとセクシー(私がセクシーと
思ってしまっただけなのだけど)な制服を着て、時が止まったような古い喫茶店でアル
バイトをするという時間が生活のなかにある。どんなものだろう。

もっと青春だった頃に、なぜ喫茶店でアルバイトしなかったのだろうと、少し悔やむ。

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珈琲王城
台東区上野6-8-15
03-3832-2863
8:30~22:00
無休