ソワレ・フランソアのある木屋町界隈には、喫茶店が密集している。

しかも、祇園にも近いこの界隈は、昔も今も遊郭。昔は喫茶も風俗もかなりの「娯楽」だ
ったから、同じ場所に存在していたのだろうか。そういえば東京の歌舞伎町にもかつて
は、「スカラ座」などの立派な名曲喫茶が数多くあった。

「築地」という喫茶店に入る。他の二店よりさらに狭い路地にあるせいか、ひっそりとして
いた。絵画のような素敵な色彩のタイルを踏みしめながら扉を開けると、大好きな独特
の古い木の匂いに包まれる。二階に案内され、深紅のベルベッド張りの瀟洒な椅子に身
を沈める。

典型的な老舗喫茶店の佇まいだが、こういう喫茶店はありそうでなく、初めて訪れた気
がした。ほっとしたくつろぎの中にも、背筋を伸ばしてしゃんとしたくなるような、バランス
の取れた上品な空気。

その理由を探っていると、女友達がふと、このお店は「誇り」を持っている気がする、と言
った。内装、調度品、音楽、珈琲。古い物を守り、そして現代にも在りつづけること。その
ことを誇りと思うこと。
なるほど、私が感じた「バランスの良さ」の理由はその「誇り」なのかもしれないと思った。

さらに、深く知りもしないでこんなふうに言うのはおこがましいけれど、「京都の人の血」
にも通じているような気がする。もちろん、東京にもいい喫茶店はたくさんあるけれど、こ
ういう佇まいを持ったお店は東京にない、という気がするからだ。

京都であるから存在する、かけがえのない老舗の喫茶店たち。しょっちゅうは行けない
けれど、あの場所があることを時々思い出すだけで心が満たされる。
またいつか、訪れることを楽しみにしながら。

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築地
京都市中京区河原町四条上ル一筋目東入
075-221-1053
11:00~23:00
無休