「月島」は、明治時代に東京湾を埋め立ててできた場所だ。

昔ながらの路地と高層ビルやマンションが共存する、中央区独特の風景があるが、
川に囲まれた土地柄か、かつての仕事圏内だった人形町や銀座界隈より開放的
な感じがする。

勝鬨橋を渡る。隅田川は凪いでいた。川面の凪は心を落ち着かせる。川沿いを少し
歩く。川岸に船がたくさんとまっていた。漁船、屋形船、クルーザー。
川沿いの道は桜の木が続いていた。花が僅かに残った桜の木から、穏やかな風が
吹くたび、花びらが、久しぶりに着たスーツに、はらはらと舞い落ちてきた。

晴海通り沿いに、「ライフ」という小さな喫茶店を見つけた。
窓は、全て分厚い茶色のカーテンで覆われている。開いているのかな、と思いなが
らドアを開けて中をのぞくと、意外にも満席に近い。唯一空いていた窓際の席に座る。

カウンターのお客が「平和島」の話をしていた。聞き耳をたてる。はじめは「夢の島」
と間違えて聞いてしまったが、すぐ競艇の話だと気づく。
電話のベルが店内に響く。いまどき黒電話か、と思ったが、カウンターのお客の携帯
電話の着信音だった。客は電話の相手に向かって「おれんちの電話番号おしえっか
らよお、こっちに電話くれねえか」と威勢よく叫んでいた。

その声は、ちゃっきちゃきの、江戸っ子だった。

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喫茶ライフ
中央区月島3-11-6
03-3531-1659