夕方、築地市場を散策した。

場内には関係者しか入れないので、市場の手前にある「場外市場」を歩く。
早朝は活気に溢れた場所なのだろうが、夕暮れの市場はどこも店を閉めていて、
廃墟のようだ。
でも、毎朝繰り返される活気を、少しばかり感じ取ることができる。どのお店も、
明日の朝まで英気を養っているという感じだ。

場外市場を離れ、築地本願寺の近くに、「華僑ビル」という古いビルを見つけた。
昭和3~4年に施工された、かなり年季の入ったビルだ。レトロな外観と内装は
近代建築好きにはたまらない。中に入ってみる。入り口に受付があるが人影は
ない。貿易関係の会社がひっそりと事務所を構えており、場所も時代も錯誤して
しまいそうな不思議な雰囲気が漂っている。

このビルの1階に、「喫茶ライライ」という喫茶店を見つけた。場所柄、中国茶や
茉莉花茶などがおすすめらしいが、とても感じのいい夫婦が営む、いたって普通
の町の喫茶店だ。

午後5時閉店なのに、午後4時50分にお店に入ってしまったが、「時間は気にし
ないで、居たいだけ居てくれていいからね」と声をかけてくれた。
厨房で片づけをしながら会話するふたりの様子が、とてもあたたかい。

戦前の匂いを色濃く残す、今にも忘れ去られそうなビル。建物の耐久も限界だし、
近いうちに取り壊されてしまうだろう。でも、その中には、こんなあたたかい営み
があったのだということを私は忘れない。

まずは、このお店が少しでも長く残ってくれることを祈りたい。

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喫茶ライライ
中央区築地2-15-13-1F
03-3541-2595