管理者承認待ちのコメントが日々増えていく。
歌人笹井宏之さんのホームページは、もう本人が更新することはない。
笹井さんは今年の1月24日に亡くなった。
長く患っていたそうで、26歳の若さで心臓発作により亡くなったのだそうだ。
ずっと、地元佐賀新聞の投稿欄に名を連ね、ケータイ短歌にも投稿していた。


冬ばってん「浜辺の唄」ば吹くけんね ばあちゃんいつもうたひよつたろ



私はこの歌にやられてしまって、ひっさしぶりに歌を詠んで泣いた。
評論の言葉は、相手に届くまでにいくつもの扉を必要とする。
小説も、評論よりは少ないけれど、いくつかの扉を開けなければならない。
だけど、詩や歌は読み手とうたい手の心をダイレクトにつなぐ。
私は安易に使われる「繋ぐ」という言葉が嫌いで、見かける度にうんざりする。
だけど、いつかの冬に笹井さんが感じた想いはたった31文字で他人の心に届く。
それは、温かいけんちん汁やおにぎりみたいなものかもしれないな、と思う。



第一歌集『ひとさらい』