「理由」


夢、みたいだと思った。


抱きしめたリコから体温は感じられないけど、体の柔らかさや匂いから、本物の俺の知っているリコを抱きしめているのだと実感する事が出来た。


俺たちは、約七年振りに再会したのだ。


 


「なんで、いなくなったの?」


そう聞くと、リコは首を横に振った。


「・・リコ、また俺たちあの頃みたいに付き合っていける?」


「無理よ、あたし、幽霊だもの。」


「別に、そんなのかまいやしないよ。リコ、俺のこと好きでしょう?」


そういうと、リコは俺を睨んだ。


「髭の生えた、女にだらしないあなたは好きじゃないわ。」


俺を睨んでいる高2のリコは、恐ろしいほど綺麗だ。


もっと俺を睨めばいい。


 


「・・どうしちゃったの?」


「え・・?」


「あの頃のあなたは、とても傷つきやすくて、女の子とまともに話す事すら出来なかったわよね。」


高校の頃、俺は毎日教室の隅にいて、空ばかり見ていた。


リコはそんな俺とは真逆で、いつだってクラスの中心だった。


明るくて、綺麗で、いつだってみんなに囲まれていた。


「そうだよ。だって、毎日どうでもよかったんだ。」


あの頃はいつだってぎりぎりの所で立っている様で、もし誰かに背中を軽く押されたら、俺は、俺自身を終わりにしてしまったかもしれない。


 「急に、俺に話しかけてきたんだよね。リコ。」


「あなたは誰とも話していなかったし、いつも空ばっかり見ていたし。・・それに、結構可愛い顔をしていたから気になっていたのよ。」


授業をサボっていた俺は、屋上で寝ころがって空を眺めていた。


突然そこに現れたリコは、いきなり俺の上に馬乗りになったんだ。


「俺は動揺したよ。だって一言も話したことなかったクラスの中心のリコが、いきなり俺の上に乗るから。俺、びっくりして泣いちゃったんだ。」


「泣き出すあなたを見て、とてつもなく愛おしいと思った。」


セーラー服のリボンと長い髪が俺の顔に触れて、やわらかくて、とてもいい匂いがしたのを覚えている。


「・・あんなに純粋だったのに、一体どうしてしまったの?」


「リコがいなくなってしまったからだよ!」


 


今でも思い出して、怖くなる。


誰かが隣にいないと、あの高2の冬の夜の記憶に、俺は殺されそうになってしまう。


「・・どうしていなくなってしまったの?」


 


リコはあの日、屋上から飛び降りたんだ。


 


 


つづく