「日本料理の名店」 と謳われるお店のお酒事情というのは、どうなっているのだろう?!
前から興味があったのだけど、一週間ほど前に、それを見る機会に恵まれた。

トーキョーでも有名な 分とく山 へ。

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とはいっても西麻布にある本店ではなく、カジュアルラインの 飯倉片町 の方。

「見てみたいけど、高級和食店だし・・」 と、少々ビビっていた自分。
が、お店に入ると想像していたよりカジュアルで、雰囲気も柔らかく、
明るくくつろげそうな空間に「ほっ」とした。


カウンターの一番奥に座ると、板前さんが一人一人ちらほらと、ご丁寧に挨拶に来てくれる。
それも、厳かな感じは全然なくて、柔らかな腰つきで気持ちがいい。

まずは、生ビールをいただきながら。
(なお、懐石料理には慣れておらず、お勉強がてらのメモ程度なので、料理の表記方法がなのはお許しください。)


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左:新生姜の茶碗蒸
右:八寸のお猪口5つ
(とこぶし大船蒸し・ハモ唐揚げと太刀魚塩焼き・焼き茄子の酢ゼリー・クラゲと白ウリの雷干し)

左の茶碗蒸は、食感が面白い。
ぷるんとしたじゅんさいと一緒に、コリコリの枝豆が入っている、とか
柔らかい蒸しの中に、歯ごたえの残っている生姜が入っている、とか
一工夫されている。

何で雷干しなのかな?と思ってたけど、後日教えていただきました。
白瓜を螺旋状に切って稲妻みたいに干すからだそう。


最初から、あまりにも濃密で美味しくて、嬉しくなってしまう。
さてさて、一方日本酒は?!

メニューをさっと見たけど、「熱燗」「冷酒」としか書いていなかった・・・。
そんなに日本酒には力を入れていないかぁ。

それなのに、この日はソムリエなんかが来ていて、隣のおじさまは白ワインを飲んでいる。
ふぅーん・・・。


まぁ、それはさておき。
まずは「冷酒」をお願いすると、「分とく山」と書かれた瓶を持ってきてくれる。

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中身は 日本響 純米吟醸 とのこと。

基本はこのお酒だけれど、たまに2,3種類入ってきていることがあるらしい。
が、この日は日本響だけだった。残念。

でも、接客はさすが。
カウンター越しで店の中を見ていた料理長・小野さんが、
瓶が出されたのを見ると、すばやい行動で、ささっ・・・と注いでくれた。
その気付くことの早いこと!

そして、お料理について色々聞くと、何でも教えてくれる。
話していると、そのうち 「おいくつですか?」?「いくつに見えますか?」なんて流れになり、
この風格と佇まいと堂々さは・・・38歳くらい? と答えたら、爽やかに笑われた・・・。(汗)

なんと!もっとお若いんですか?!
スゴイ・・・そんな若いのにとっても詳しくて、何でも知っている。
それに、お店全体の状況をしっかり把握して、ピンポイントで他の板前さんを動かしつつ、
お客さんへの配慮も怠らない。


さて、ここからは、日本酒はちょっと置いといて、お料理オンパレード(なが~いです)。

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左:じゃこ菜の飯蒸し
中:蛤の南蛮焼き
右:石垣豆腐のお吸い物

蛤はとっても柔らかい。なんて良い具合に焼かれているんだろう。
ちなみに、「南蛮」というのは「ネギ」を使っているから、そう言うんだとか。

豆腐は石垣島産?と思って食べると、中身は里芋を煮くずして固めたもの。
小野さんに聞いてみたら、「石垣に見立てたからです」 とのこと。
なるほど、産地ではなく見立てかぁ。日本料理って名称も奥が深い。

それにしても、若布が、ぶりぶりで分厚くてビックリ!村さんの若布みたい。


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左:太刀魚のお造り
右:鱧とひめ筍  梅肉つき

太刀魚、この日で一番好きだったのはコレだ!と言い切れるくらい絶品。
さっと皮が炙ってあるからか、脂のノリがちょうど良く、酢ゼリーがものすごく良い組み合わせなのだ。
脂を酢ゼリーが中和してくれるというか。


この辺りの料理を楽しんでいると、「大きいのがくるので、間を空けておいてください」 と板前さん。
え?こういう小さい料理ばかりじゃないの?! と思っていたら・・・

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こーんなに大きな キンキの煮付け をお頭付きで出してくれた!

お頭付きといえばお祝い事、お祝い事といえばめでたい事、めでたい事といえば、やっぱり赤い魚。
そう、この日はちょっとしたお祝い事(?!)があったワケで・・・。

30?以上はありそうな煮付け、ほろほろと骨から身ははがれるけど、しっかり締まっている。
それにやっぱり昆布の効いた出汁が美味しい。



さらに。

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左:鮎の塩焼き
右:紫陽花真如のピースあんかけ

ちなみに鮎の食べ方ならちょっと得意。
小さい頃から祖父が鮎を釣ってきてくれていたお陰で、
身をお箸でほぐし、尻尾やひれなどを取り、頭からすぅっと背骨を抜くやり方は慣れているのだ。

・・・と言っている矢先に、頭からブチっと切れた。(汗)
ちなみに、こんな小さな鮎だもの・・・身はもちろん、内臓も、尻尾に背骨も、頭も全部食べてしまった。
途中、空いたお皿を下げようとする板前さんを制してまで。

そして、たれのタデ酢。「タデ食う虫も好き好き」 のタデ。
家ではタデ酢なんて出なかったけど、日本料理では鮎には定番のタデなんだとか。知らなかった~。
少しおかゆが入っているので、とろ~りしている。

紫陽花はこれも見立て。
中には海老真如、外側を冬瓜で巻くことで、紫陽花のように見立てている。かわいい!
そして緑色のあんかけが葉っぱだろう。
グリンピースを使った、綺麗なグリーンだ。


最後に、評判の 炊き込み御飯

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この日は、アナゴと有馬山椒 の炊き込み御飯。
ほかほかに炊き上がった土鍋から、お椀に移して、ちゃんとお味噌汁も沿えてくれる。
当然、全部食べられるワケがないので、残りはお持ち帰り。


以上!お料理オンパレードでした。 もうー・・・おなかポンポン。(これも名古屋弁?!)


さて。
お店がピークな時でも、にこやかに、でも素直に 「テンパってます(笑)」と言っていた板前さんたちも
多少他のお客さんが引いて余裕ができてくると、いろいろお話をしてくる。

しかも、全然固い雰囲気ではなく、とってもフレンドリー。
「何を造ってたの?」 とか 「これはどうやって造るの?」 など、気さくに喋れるから嬉しい。

でも、そうしてお喋りをしながら、一体全体、何時間かけて食べただろうか。


あぁ、炊き込み御飯で最後ではなかったのね。
最後の最後のデザート・・・

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で、力尽きる・・・もう、おなかいっぱい・・・。


というか、よく食べよく飲んだ。
最初の冷酒を頂いたあとは、 一合徳利のお燗を8本 ほど。
飲むとあまり食べないのを、ここでもしっかり飲んでしっかり食べてしまった。


ちなみに、銘柄は書いていなかったのだけど、おそらくメニューにあったお燗は本醸造だろう。
でも、「この純米が良いよねぇ」 ということで、小野さんにお願いをして、
冷たいお酒用の日本響・純米吟醸を熱燗にしてもらったのだ。

飲んでみると、冷たいのもいいけど、お燗にしたって全然大丈夫!
でも、一番最初に「日本響をお燗にしてください」 とお願いしたときの小野さんは、一瞬迷っていた。

そして、我々が飲み終わったころ 「そのお燗、いかがでしたか?」 と言う。
むしろ、こっちの方が個人的には好きですが、そんなに変ですか?と聞きかえすと、
「純米吟醸はお燗にしたことがなかったもので」 と。

え”ーーそうなの?!
あの迷いは、「やったことないけど、大丈夫なんだろうか?」 という迷いだったのか。


世間にはとっても有名な懐石料理のお店でも、
やっぱりまだまだ日本酒に対しての認識はそういう感じなのかぁ。
・・・ワインには力を入れていたのに・・・(と、またブーたれてみる)。

後日談: 分とく山自体も日本酒の勉強会などをして、お勉強しているのだけど
いかんせん、お客さんが「燗なら本醸造だろ」 とか「ワインを入れろ」という方が多く、
やっぱりVIPの好みのラインで固まってしまうみたい?!



とはいえ、繊細な料理と合うような日本酒を選んで、日本響だったのだろう。
どの料理を邪魔する事も、日本酒だけが主張するような事もなく。

さらに、お料理と日本酒のハーモニーを色々楽しめるようになれば最高なのにな。


なにはともあれ、
「本店よりもリーズナブルなのに、味の評価は同等かそれ以上」
という飯山片町の分とく山。

本店には行った事が無いから比べられないけど、
おなかは、とっても満足満足。

そして、日本料理のお勉強にもなりました。


[お店情報]
住所:東京都港区六本木5-18-20六本木ファイブビル1F
TEL:03(3585)5788 / 03(3585)5778
営業時間:11:30~14:30(LO.13:30) / 17:30~23:00(LO.21:30)
定休日:日曜

[飲めるお酒]
プレミアムモルツ
冷酒は日本響
燗酒は?
でも日本響もお願いすればやってくれる