今となってはもう夢か現かもわからない。

夕暮れの薄闇に、破れた提灯が揺れる。
ひらりと捲れた垂れ幕の向こうから、まっしろな光に目を射抜かれた。
途端に溢れ出す、白く穏やかな煙と香ばしい香り。
そして、まるで呼吸するように熾る炭の赤。

見慣れた光景の中に、突如現れた焼き鳥の屋台。
炎に引きつけられる虫と同じで、気付けばふらふらと近寄っていた。
客が来たことに驚くように、中にいた男が顔をあげる。

後にも先にも、見かけたのはそれっきり。
次にいつ巡り会えるかもわからない。
なぜなら。

その屋台は金曜日にしか出ていないから。



・・・平日やんけ!!!


長い前振りで失礼しました。

私は原則的には土日の週休二日のサラリーマンです。
平日には専ら狛江駅北口前のスーパーマーケット「小田急OX狛江店」を利用しています。食品売場は夜10時半まで。スーパーにしてはちょっとお値段高めですが、背に腹は代えられない。
たまに、一駅前の喜多見駅で下車して、夜中の2時まで営業しているスーパーの「サミット喜多見駅前店」を利用することもあります。
歩く距離が伸びるのはダイエットと唱えつつ。ありがたや深夜営業。

が、のんびりできる休日には、多少いつもとは違ったことがしたくなるもので。
珍しく代休で休みになったとある金曜日に、狛江郵便局近く、松原交差点に面したスーパー「京王ストア和泉店」にぶらぶらと寄ってみたのでした。
「京王ストア」に行くことは、頻繁ではないにしろ、それほど珍しくもありません。珍しいのは、その日が金曜日だったこと。
いつもは駐輪場として解放されている店の側面に、私は見慣れないものを発見しました。
それが、冒頭の焼鳥の屋台です。
周囲をブルーシートで囲った、とても質素なつくりの。
嘘。こんなん前はなかったやろう。

訊けば、今年に入ったくらいの時期からやっているとのこと。
そんな訳はないと更に追求すれば、金曜日だけ出店しているとのこと。
それで腑に落ちました。確かに、駅と家の間にあるわけでもないので、会社がある平日に「京王ストア」に買い物にくることはありません。
屋台だのお祭りだの買い食いだの、みんな大好きな自分が今まで屋台に気付かなかったのも当然。

っていうかなんで金曜日。
狛江には一人暮らしのサラリーマン多いでしょう?
何かどうしようもない事情があるのでしょうか。

自分が滅多と味わうことのできない焼き鳥と思うと、どこかしら惜しむ気持ちが沸いてしまうもののようです。逃がした魚が大きく見えるように。
心なしか、めっちゃうまかったような気がした屋台の焼き鳥。
金曜日に「京王ストア」に行ける方には、握り拳でお勧めいたします。

味は塩とタレから選べます。注文してから焼いてくれるので、先に注文を済ませて、京王ストアで買い物を済ませてから、焼きたての焼き鳥を引き取りに行くのが賢いやり方です。私のお気に入りは「ねぎま150円」と「豚バラ130円」。いずれも塩で。

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この写真だけが、あれが夢ではなかった証拠です。ねぎまアゲインー!