昔々の話じゃ。

今から40年前、京王線の電車はまだ木の電車じゃった。
周囲も田んぼばかりでなーんも無かった。

今でこそ東京は大都会じゃが、昔はどこも同じ田舎じゃったよ。

上北沢もそうじゃ。
なーんも無かった。
今や上北沢の三丁目は高級住宅街になっとるようじゃが、当時は皆同じようなもんじゃったのう・・・。駅も立派になったな。


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わしが若い頃は浅草が都会でな。
それから銀座に移って、おまえが生まれた頃は新宿や渋谷が盛り上がり始めた頃じゃった。
今はお台場と聞いたんじゃが。
昔は海じゃったのになあ。
もう遊びに行ったか?

昔の京王線はな、今みたいに本数は多くなかったんじゃよ。
走るスピードものんびりじゃった。
ゴトゴトゴトゴト・・・・揺られながら乗っとった。
上北沢からよく浅草辺りに遊びに行ったもんじゃ。

わしの嫁さん、そうおまえのばあちゃんの田舎は愛媛の松山なんじゃが、松山の郊外電車は今でものんびりしたもんじゃよ。
まるで、40年前の京王線のようでの。
車掌さんの車内アナウンスは昔ながらのスピーカーから聞こえるんじゃ。
冷房なんぞ無くてな、天井で扇風機が回っとる。

それがいつの間にか頑丈な鉄の電車になったのう。
丈夫で速いのはいいが、特急や急行が目の前をビュンビュン通り過ぎて行く光景にはちょっとビックリしたわい。
朝も数分ごとに電車が来るんじゃなあ。


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京王線も変わったもんじゃ・・・。
決して田舎の駅では見られんからな。


もちろん、ハワイ島にもないな。

40年前、移住した頃はのんびりした田舎じゃったよ。
もちろん今でもハワイ島はのんびりしとる。
しかし、お隣オアフ島のワイキキビーチの海水は、昔に比べて濁ったようじゃな。


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遠くから見るとキレイじゃが。


40年前はの、まだ日本人旅行客もほとんどいなくての。
海水は透き通ってキレイじゃったよ・・・。
40年の間にホテルや観光施設がどんどん建って、観光客が押し寄せるようになってから、変わってしもうた。
今やホノルルは世界でも有数のリゾート地じゃからなあ。

ハワイ島も40年前はなーにも無かったんじゃが。
今はリゾート施設や高級住宅が続々とできよる。
ハワイ島の海洋深層水を汲み上げるための施設もできたんじゃよ。
日本企業が金儲けのためにハワイの水を汲み上げに来ておっての。
オアフ島だけじゃなく、ハワイ島もどんどん荒らされて行くんかのう・・・。

残念なことじゃ。


土産にわしが作りよるコナコーヒーを置いておくわい。
この「コナコーヒー」はな、日系人が栽培を始めたコーヒーなんじゃ。


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これがコーヒー豆じゃ。


そのスタートは明治元年。
ハワイ島開拓のために日本から移住してきたのが日系人一世でな。
溶岩の岩で埋め尽くされた土地にコーヒーを植えたんじゃ。
この土地は水捌けが非常に良くてな、コーヒーの栽培にとても適している土地だったんじゃよ。
皆がんばって働いたらしいわい。
そのおかげでな、今やハワイ島の名産品、世界的にも有名な高級コーヒーじゃ。
知っとったか?

最初は3年計画だったらしいんじゃ。
3年後、開拓民として働いた日本人のうち、3分の1が日本へと帰った。3分の1が新天地を求めてアメリカ本土へ渡り、残り3分の1がハワイ島に残ったんじゃよ。

わしの祖父がな、その開拓民だったんじゃ。
祖父は日本への帰国組での。
上北沢に恋人を待たせていたんじゃよ。
わしのばあちゃんじゃ。

結婚して、生涯を上北沢で暮らしたんじゃ。


・・・・・さて、昔話はこれ位でいいじゃろ。
おまえももう疲れたみたいじゃしな。


現代の東京は生活のスピードがとても速い。
急いで進むのもいいんじゃがな、たまにはゆっくり街を歩いてみたらいい。

毎日朝早くに起きて、電車に揺られて、会社へ行って、気が付いたら夜。
家に帰ったら寝るだけじゃろ。
それじゃあ、つまらん。
たまには仕事のことを忘れて、休みの日はゆっくり街を歩いてみたらいい。
いつもは通り過ぎるだけの道で、ちょっと立ち止まってみるのもいい。
たまには上を見上げてごらん。


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もう秋も終わりじゃよ。
気付いとったか?

季節をゆっくり感じる暇も無いくらい、今の若い人は時間に追われているんじゃのう。
電車のスピードも、生活のスピードも速くなって、もうわしらではついて行けんなあ。
上北沢も都会になった・・・。


それじゃ、そろそろ帰るからの。
また遊びに来るわい。