また、廃業か?
毎年暮れも近くなると、ひとり呟く機会が多くなる。
今回知らせが届いたのは新高円寺駅の南側、真っ暗な住宅地に位置する小宝湯だ。
古きよき伝統の佇まい、しかし内部はというと古びた洋館のようでもあり、
庭からは幾匹もの動物が顔を覗かせるなど、一風変わった杉並銭湯である。
 
だが私にとって思い出されるのは、昨年秋に訪れた際の「事件」だ。
迷いながらもようやく辿り着いた先にあったのは、都内でも一際大きく勇壮な唐破風。
見とれてしまった自分は、まず外観を写真に収めることにした。
だがしばしの後にファインダーから目を離せば、先ほどまで風に揺れていた暖簾がない。
まだ20時過ぎ、雨が降っているわけでもないのに店仕舞いとは早すぎる。
玄関へ急ぐと、ばたばたとおかみさんが出てきた。
聞けば、お客さんが誤って浴槽の栓を抜いてしまったらしい。
沸かし直すには時間がかかるし、商売にならないから今日は店を閉めるというのだ。
すんでのところで湯に浸かれぬ無念、それだけに再訪した際の感動は大きく、
杉並区の中でも一際印象深く刻まれているのが、この小宝湯だったのだ。 
 
 
現在日本に残る銭湯というのは、ほとんどが昭和の高度成長期に建てられたものである。
とすればすでに建築から半世紀、老朽化の進行は多くが直面している問題だ。
そして若い後継者の不足、老齢の夫婦のみで切り盛りしているものも少なくない。
現在の経営者の代でおしまい、という切実な話は何度聞いたか思い出せない。
これらの要因は今まで独立した、「点」や「線」でしかなかったかもしれない。
だが間もなくそれらは繋がり絡まり「面」となり、怒涛の勢いで押し寄せてくるに違いない。
 銭湯文化の崩壊?
それは遠いどこかの出来事ではなくまさに今、我々が目の前に突きつけられている現実だ。
 
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○ 小宝湯
 
住所 東京都杉並区堀ノ内3?28?6
 
※ 2009年11月29日をもって廃業