いったい、今年何度目の「まさか」だろう。
 渋谷区の玉川湯、廃業?

脱衣所内は洋風の意匠が濃いものの、余計なものなど見当たらず、
創業時の風情をそのまま残す浴室。
さらには現役ペンキ絵師の見事な赤富士、
この区にて一番の贔屓はと問われれば、私は迷いなく玉川湯を挙げたろう。
かつて一旦廃業となるも、区営の公衆浴場として復活。
生け花の奇麗なお風呂屋さんとして地域住民に親しまれてきたのだが、
やはり時代の波には打ち勝てず。
この度、9月末をもって完全に廃業の運びとなった。
 
小雨のそぼ降る最終日、暖簾を潜ると目の前にずらり並ぶスニーカー。
はて、流行りの銭湯ランナーも、このあたりにコースなどあったろうか。
訝しがりつつ踏み入れば、どうやら部活帰りの地元中学生らしい。
すでに入浴は済ませたと見えるが立ち話は延々、一向に終わる気配がない。
彼らの脇を縫うように、浴室へと向かう。
いつかと同じままのペンキ絵が迎えてくれる。
しかし今宵の赤富士は、どうしてかとても悲しげに映る。
 
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 第七拾九番札所 ~ 玉川湯 ~ 渋谷区・本町
※ 2009年9月30日をもって廃業