前回玉の湯を訪れたのは、今春の初めごろだったろうか。
北口の商店街をまっすぐにゆくと現れる大きな唐破風、風情ある竹垣。
古き良き伝統を色濃く残す玉の湯は、杉並区を代表する名銭湯と呼んでも過言ではない。
1昨年に初めて訪れた際は真っ青に塗りつぶされていた背景画も、
このときには見事な富士山が復活していた。
銭湯受難の時代だが、開店前には20人近い常連客が列を作るなど、
 玉の湯に限ってはまだまだ大丈夫?
そう思ったのもつかの間、ほどなくして友人から廃業の知らせが届いた。
 
早いもので、あれからもう5ヶ月が経つ。
廃業した銭湯の多くはすぐに解体が始まるのだが、玉の湯に関してはその気配は微塵もない。
代わりに見つけたのは、地域住民からと思しき入口の寄せ書きだった。
常連だった人、たまに来ていた人、一度も訪れるのことのできなかった人。
想いは様々だが、これほどまで地域に愛された銭湯に、私は出会ったことがない。
自分も一筆残していきたいと思ったが、残念ながら鞄に筆記用具は見当たらなかった。
最後となるであろう姿を目に焼きつけ、背広姿の波に逆行して歩く。
 
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※ 第七拾参番札所 ~ 玉の湯 ~ 杉並区・西荻窪