かつて、銭湯には三助(さんすけ※)と呼ばれる職業人がいた。
職人技の「流し」で入浴客の疲れを癒す、粋な裸の男衆。
その発祥は古く江戸時代の湯屋にまで遡るが、年配の経営者からは
今でも昭和期の実体験として聞くことができるから、苔生した昔話というわけでもない。
 
だが時代は、大きく変わった。入浴客の著しい減少に、人員の削減は必定。
かくて彼らは一人、二人と職を辞し、江戸より続いた伝統の働き人たちは、
ニッポンから姿を消したかに思われた?
 
だが荒川の日暮里に、ただ一人残っていた。
15歳で富山より上京、この道50年という現役の三助、橘秀雪(しゅうせつ)さんだ。
受付でお代と引き換えに頂く木札、浴場でこれを掲げると
橘さんがやってきて、肩から背中を揉み解して洗い、疲れを癒してくれる。
一人前までには5年とも10年とも言われた熟練の技、
思わずうとうとしてしまうほどの一時だ。
首、肩、腰、ひととおり揉み解したあと勢いよく背中を叩くと締めの合図。
高い天井にこだまして、日暮里の夕暮れには今日も景気のよい音が響き渡る。
 
平成の世に、湯屋の伝統を今なお受け継ぐ斎藤湯。
銭湯での職人技に遥か江戸の記憶を偲ぶのも、
また粋な東京下町の楽しみ方ではないだろうか。
 
 
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○ 斎藤湯

住所 東京都荒川区東日暮里6?59?2
電話 03-3801-4022
営業 16:00~24:00
定休日 金曜
 
※ 三助(さんすけ)とは、銭湯で顧客に対して入浴に至る直接的・間接的に様々なサービスを提供する従業員のことである。客に垢すりやマッサージを行うサービスを「流し」と呼び、流しは昭和中頃に隆盛を誇り、入浴時のぜいたくとして捉えられていた。(Wikipediaより引用)