本郷も かねやすまでは 江戸の内?
その名は古く徳川時代の川柳にまで遡る、文京区の本郷。
坂の多い古風な町並み、あちこちに見られる古本屋や出版社。
東側にはかの日本最高学府を構え、かつては多くの文人たちが住まったこともあり、
どこかしら知的な雰囲気漂う閑静な住宅街だ。
その一角にゆらりはためくのは、風情あふれる手染めの暖簾。
本郷に残る唯一の銭湯、菊水湯だ。
 
大正とも明治とも伝えられる創業、由緒ある土地柄にふさわしい堂々たる面構え。
大きな唐破風に、風情ある懸魚飾り。お約束の富士山も、
今春に亡くなられた早川氏のペンキ絵が、驚くほどきれいなまま残されている。
だが注目すべきは、男湯隅の本棚だ。
古い銭湯にも雑誌や漫画を備えた銭湯は少なくないものの、
菊水湯の本棚といったら、ミステリーやサスペンスの長編小説がずらり居並んでいるではないか。
さすがは本郷、そこはかとない知的な空気は銭湯の内側までも支配していたようだ。
 
昨今では少なくなったものの、東大の学生たちも未だちょこちょこ訪れるという。
脱衣所の中央には、硝子机を囲むようにした畳椅子。
煮詰まった頭で研究室を抜け出した学生たち、
菊水湯は心身ともに癒された彼らの本音の語り場として、
日本が世界に誇る大発明の発信地になってきたかもしれない。
 
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○ 菊水湯
 
住所 東京都文京区本郷4?30?16
電話 03-3815-2637
営業 15:30~25:00
定休日 金曜