福喜湯を目指して堀切の商店街を歩いていると、
ちょうどその灯りが見えた辺りでまばらに雨が降り出した。
傘も無かったのでこれ幸いと駆け込むが、待ち受けていたのは暗闇と静寂だ。
まだ20時を回ったばかりというのに照明は落とされ、一人のお客さんの姿も無い。
奥の浴室に桶を洗うご主人の姿が見えたので、この雨に早めの閉店かと問うと
 ゆっくり入っていってください?
ほっと胸を撫で下ろし、誰もいない湯船に肩を沈める。


福喜湯を営業しながら、他店も回るのが趣味のご主人。
休みは少ないだろうが、訪れた場所は数多い。
銀座に駒込に荻窪、各地で入った銭湯の話に花を咲かせる。
しかし雨のためか、その長話にも途中1人の中年男性が入ってきただけで
他にお客さんがやってくる気配は無い。
投げ出されたように床へ置かれたテレビの音が、
がらんとした空間に響き渡っているだけだ。
 
 
雨は、ますます強く降り出した。
足止めは長くなりそうに思われたが、ずっと前に忘れられたままという傘を頂いたので、
頭を下げて静かに福喜湯を後にした。
 
 
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○ 福喜湯

住所 東京都葛飾区堀切5?11?5
電話 03-3602-2024
営業 16:00~22:00
定休日 土曜