8月の初め、漫画家の赤塚不二男氏が亡くなった。
それに伴い行われた告別式だが、規模の大きさもさることながら
氏が才能を見出したというタレントの弔辞について、
手にした紙が白紙との噂が飛び交うなど、その記憶は未だ新しい。
 
 
そんなニュースで思い出されたのは、竜の湯。
ご主人自ら「東京で一番有名な銭湯」を豪語する、新宿区は上落合の銭湯だ。
大黒湯、タカラ湯廿世紀浴場、東京には"名銭湯"がいくつか存在するのだが、
新宿で、というのは未だ耳にした事がなかった。
まさかそんなはずはないだろう、とたかをくくっていた。
 
しかしご主人の話を聞くにつれ、あながち冗談でもないということがわかってきた。
1階の浴場の上階に、くつろげるカーペット敷きの大広間を設けたこの銭湯。
特に目を引くのが、特注という巨大な"競細腰柳風呂"の拡大図だ。
新宿よりほど近い立地も手伝い、一般のお客さんのみならず
著名な芸人さんたちの密かな忘・新年会の場として、
長年愛されてきたというではないか。
 
そしてご主人一番の誇りは、なんとかの赤塚氏が直に描いたお父上の肖像画だ。
あだ名は、自他共に認める"アインシュタイン"。
かなり前から、密な交流があったとも聞く。
"バカボン"や"おそ松くん"でしかその名を聞いたことのない自分には、意外も意外。
初めて見るこんな生き生きとした画風に、驚かずにはいられなかった。
 
 
そんな竜の湯だが、氏に先立つこと早や半年が経つ。
がらんとした大広間に、ご主人と二人っきりの静けさ。
時おり見せるため息も、かける言葉は見つからなかった。
 
 
shinjukuku_tatsunoyu_05.jpg
 
shinjukuku_tatsunoyu_04.jpg
 
shinjukuku_tatsunoyu_02.jpg
 
shinjukuku_tatsunoyu_07.jpg
 
shinjukuku_tatsunoyu_01.jpg
 
shinjukuku_tatsunoyu_08.jpg
 
 
  
○ 竜の湯
 
住所 新宿区上落合1?15?7
 
※2008年廃業